羽毛、羽衣と鱗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 15:36 UTC 版)
詳細は「羽毛」および「風切羽」を参照 羽毛は(現在では真の鳥類であるとは考えられていない恐竜の一部にも存在するが)、鳥類に特有の特徴である。羽毛によって飛翔が可能になり、断熱によって体温調節 (thermoregulation) を助け、そしてディスプレイやカモフラージュ、情報伝達にも使用される。羽毛にはいくつもの種類があり、それぞれが、個々のさまざまな目的に応じて機能している。羽毛は皮膚に付属した上皮成長物であり、羽域(羽区、pterylae)と呼ばれる、皮膚の特定の領域にのみ生ずる。これらの羽域の分布パターン(羽区分布、pterylosis)は分類学や系統学で使用されている。鳥の体における羽毛の配列や外観を総称して、羽衣 (plumage) と呼ぶ。羽衣は、同一種のなかでも、年齢、社会的地位、性別によって変化することがある。 羽衣は定期的に生え変わっている(換羽、moult)。鳥の標準的な羽衣は、繁殖期のあとに換羽したものであり、非繁殖羽 (Non-breeding plumage) として知られている。あるいはハンフリー・パークスの用語 (Humphrey-Parkes terminology) によれば「基本」羽 ("basic" plumage) である。繁殖羽、あるいは基本羽の変化したものは、ハンフリー・パークスの用語法によれば「交換」羽 ("alternate" plumages) として知られる。ほとんどの種で、換羽は年1回起こるが、なかには年2回換羽するものもあり、また、大型の猛禽類は、何年かに1回だけ生え変わるものもある。換羽のパターンは種ごとに異なる。スズメ目の鳥に見られる一般的なパターンは、初列風切が外側に向かって(遠心性換羽)、次列風切は内側に向かって(求心性換羽)、そして尾羽が中央から外側に向かって生え変わっていく(遠心性換羽)。スズメ目の鳥では、風切羽は、最も内側の初列風切から始まり、一度に左右1枚ずつ生え変わる。初列風切の内側半分(6番目の第5羽)が生え変わると、最も外側の三列風切が抜け始める。最も内側の三列風切が換羽したあと、次列風切が最も外側から抜け始め、これがより内側の羽毛へと進行していく。初列雨覆は、それが覆っている初列風切の換羽に合わせて生え変わる。ハクチョウ類、ガン類、カモ類といった種は、すべての風切羽が一度に抜け、一時的に飛ぶことができなくなるほかアビ類、ヘビウ類、フラミンゴ類、ツル類、クイナ類、ウミスズメ類にもこのような種がある。一般的な様式として、尾羽の脱落と生え変わりは、最も内側の一対から始まる。しかし、キジ科のセッケイ類においては、外側尾羽の中心から換羽が始まり、双方向への進行が見られる。キツツキ類やキバシリ類の尾羽では、遠心性換羽は少し変更され、これらの換羽は内側から2番目の一対の尾羽から始まり、そして一対の中央尾羽で終わる。これによって木をよじ登るのための尾羽の機能を維持している。営巣に先立って、ほとんどの鳥類の雌は、腹に近い羽毛を失うことで、皮膚の露出した抱卵斑(英語版)を得る。この部分の皮膚は血管がよく発達し、鳥の抱卵の助けになる。 羽毛はメンテナンスが必要であり、鳥類は毎日、羽繕いや手入れを行い、かれらは日常の9%前後をこの作業に費やしている。くちばしは、羽毛から異物のかけらを払い出すだけではなく、尾腺(英語版)からの蝋のような分泌物を塗ることにも使われる。この分泌物は羽毛の柔軟性を守り、抗菌薬としても働き、羽毛を劣化させる細菌の成長を阻害する。この作用は、アリの分泌するギ酸によって補われているとされ、鳥類は羽毛の寄生虫を取り除くために、蟻浴として知られている行動を通してこれを得ると考えられている。 鳥類においては、羽毛が紫外線の皮膚への到達を妨げている。鳥類は、皮膚から皮脂を分泌し、羽毛を羽繕いすることによって口からビタミンDを摂取しているとの説もある。この説は毛皮を有する哺乳類にも該当する。 鳥類の鱗(うろこ)は、くちばしや、鉤爪、蹴爪と同じくケラチンから作られている。鱗は主に趾(あしゆび)や跗蹠(ふしょ)に見られるが、種によっては踵(かかと)のずっと上の部位まで見られるものもある。カワセミ類やキツツキ類を除いて、大部分の鳥の鱗はほとんど重なっていない。鳥類の鱗は、爬虫類や哺乳類のものと相同性であると考えられている。
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