繁殖と生活周期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 01:57 UTC 版)
通常、ライオンは4歳頃に受胎が可能となる。交尾の時期は決まっておらず、発情期のようなものはない。他のネコ科の動物のように、オスはペニスに傘状の「突起」を持っている。この「突起」がメスの性器を刺激し、排卵を促す。メスが一頭のオスとだけ交尾するということはまずなく、交尾期には複数のオスと接触するのが普通である。交尾は数日かけて行われることもあり、番のライオンはたいてい食事をとらず1日におよそ20-40回の接合を行う。また飼育個体は妊娠しやすい傾向にある。 妊娠期間は平均110日であり、メスはプライドの場所からやや離れた、他の動物の目につかない巣穴で1頭から4頭の幼獣を産む。出産直後の子ライオンは体重が1.2kgから2.1kgほどでおよそ1週間は目が見えない状態であり、ほとんど無力である。這いずりまわるのは生後1-2日で、3週間ほどで歩き回ることができるようになる。幼いうちはこの巣穴に比較的近い場所で狩りを行い、移動の際も他の動物に襲われないようにメスが子供たちの首筋をくわえて何度もねぐらをかえる。 母となったメスは普通、子供が生後6-8週間になるまでプライドに戻らない。例外的にこの期間が短縮されるのは、他のメスライオンと出産時期が重なった場合である。例えばプライドにいるメスたちはしばしば同時に受胎するため、幼獣に乳をやり育てることは共同(子供がひとり立ちする準備段階に入るまで)で行われる。この場合母ライオンが誰かということは問題にされず、幼獣はプライドにいる全てのメスから同じような扱いをうける。出産が重なることは、彼らが生き残らせ、大きく育てるためには大事なことである。たとえばあるメスが他のメスの出産後1-2ヶ月して子供を産んだ場合、後から産まれた幼獣が食事から締め出され飢死しがちである。 2歳まで生きる幼獣は20%に満たない。ジャッカルやハイエナ、ハゲワシ、ヘビに襲われることもあり、アフリカスイギュウでさえ子供のライオンの匂いを嗅ぎつけたなら、親たちの守ろうとした巣穴に殺到し、踏み殺そうとする。 プライドのオスが争いに負けて交代すると、新しいオスが幼獣を殺すこともある。これはおそらくメスライオンは子供が成長するか死ぬまでは発情しないからである。子殺しを行うオスに母ライオンはしばしば反発するが、成功することはまれである。たいていオスは2歳に満たない幼獣を殺す。母ライオンはオスよりも体重が軽く、力も弱い。1頭のオスに対して3、4頭のメスが結束した場合には、子供を守れることもある。 初めてプライドへと連れていかれた幼獣は母ライオン以外の前ではじめから堂々と振舞うわけではない。しかしすぐにプライドでの暮らしに夢中になり、幼獣同士だけでなく成獣とも遊ぼうとする。母ライオンは我慢強くなる傾向が強いが、オスの場合は時と場合による。じっと幼獣がその尻尾やたてがみで戯れるのに任せる時もあれば、唸り声をあげて追い払う時もある。 離乳は生後6-7ヶ月からである。オスは3年ほどで成熟し、4、5歳になると他のプライドのオスたちと決闘して、縄張りを争うようになる。10-15年で力が衰えるほどの高齢になるが、それはプライドを守るために致命傷を負ったことがないことを意味している。またライバルのオスから群れを追い出されたものが再び天下をとることはごくまれである。子孫を増やし育てることはごく短い期間だということである。プライドを支配してすぐに子供を儲けることができた方が、追い出される前に成長させることができる。 プライドから追放され、放浪者となるのはオスばかりではない。多くのメスは産まれたプライドに留まり続けるが、プライドが大きくなりすぎると若いメスが縄張りを追われ、群れから放り出される。さらに新たなオスがプライドを支配するようになると、若い個体は雌雄を問わずに追い出されないという保証はない。メスが放浪して生きることは簡単ではなく、こうしたメスが幼獣を成熟させた例はほとんどない。ある統計によれば雌雄を問わずに同性間でホモセクシュアリティー的な交流を持つ。
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