第9巻: カインドリー・ワンズ
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「サンドマン (ヴァーティゴ)」の記事における「第9巻: カインドリー・ワンズ」の解説
この巻でシリーズは悲劇的なカタストロフィを迎える。初めにプロローグとして、プロモーション用のアンソロジー誌 Vertigo Jam 第1号に掲載された10ページの掌編 The Castle でドリーミングの主な住人が紹介される。残りを占める長編「カインドリー・ワンズ」は、コミックブック13号にわたるシリーズ最大のボリュームを持ち、構成は複雑である。ドリームを宿命の主人公の位置に置いたギリシア悲劇として書かれ、三相一体の魔女がコロスの役を務める。過去の巻で展開されたストーリーが引き継がれており、人間界に解き放たれたトリックスターであるロキとロビン・グッドフェローが物語の発端を作る。ドリームを愛する妖精ヌアラ、夫と息子の復讐を求めるリタ・ホール、恋人関係にあったが破局した魔女テサリーらはそれぞれ乙女・母・老婆の役割に擬せられ、それぞれ三人の魔女/復讐の女神エリーニュスに加担してドリームに破滅をもたらす。そのほかにも過去の各エピソードを代表するキャラクターがサブプロットを展開する。 ほかの巻のようにリアリスティックではなく、表現主義風の様式化されたタッチで描かれている。メインの作画家マーク・ヘンペル(英語版)は、アメリカン・コミックで主流のスーパーヒーロー作品とは作風が異なっており、DC社のオルタナティヴ系インプリントであるピラニア・プレス(英語版)で精神病院の収容者を主人公にした作品『グレゴリー』を書いていた。 The Castle 夜半過ぎに悪夢から覚めた男は、次の夢を恐れつつ眠りに引き込まれる。彼は巨大な本棚が林立する図書館で司書ルシエンに迎えられ、ドリームの城を案内されながら、夢見る者のために物語を準備しているドリーミングの住人たちに引き合わせられる。 The Kindly Ones 夢の中で胎児期を過ごした幼児ダニエル・ホールが母リタの下からさらわれる。その犯人はロキとロビン・グッドフェローだった。しかしリタはドリームが息子を殺したと信じ、狂乱の中で復讐を誓う。リタの精神は現実世界を離れ、神話のゴルゴーン姉妹に迎え入れられてメドゥーサの役割を帯びる。抜け殻となった体を魔女テサリーがドリームの干渉から守る間に、リタは旅を続けてついに復讐の女神エリーニュスと一体化する。彼らは肉親を手にかけた者に復讐する権利を持っており、息子オルフェウスを殺したドリームは正当な獲物だった。エリーニュスは無敵の力でドリーミングを蹂躙する。掟に縛られたドリームの性格や、彼を救おうとする妖精ヌアラの行動が足枷となり、エリーニュスに対抗する手段がなくなる。ドリームは長い煩悶の末に運命を受け入れる。 ドリームは姉デスとともに峻嶮な山の峰に立ち、最後の会話を交わす。この成り行きはドリームが待ち望んでいたことでもあった。デスは弟の手を取り、別の世界に送り出す。 リタには知る由もなかったが、ダニエルはロキらの下から救い出され、ドリーミングで保護されていた。ドリームの遺志により、ダニエルは新しいドリームへと変貌を遂げた。
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