第5巻: ゲーム・オブ・ユー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 23:48 UTC 版)
「サンドマン (ヴァーティゴ)」の記事における「第5巻: ゲーム・オブ・ユー」の解説
内容は単一の長編。登場人物の多くが女性で、ジェンダーと社会的な疎外、また成長とアイデンティティの確立のテーマが扱われている。当時のコミックとしては珍しくトランスジェンダーや同性愛者のキャラクターが使われており、拒否反応を示すファンもいた。ほかの主流メディアに視野を広げても、まだこれらのテーマが一般化していない時代だった。それらのマイノリティの描写に関しては批判もある(#批判)。主人公のドリームがほとんど登場しないこともあり、この巻はシリーズで最も不人気だったという。ゲイマンは「ファンダムとは何かということと、なぜ人がファンタジーを求めるか」についての物語であり、ファンの神経を逆なでする面があると述べている。 作画を主に担当したショーン・マクマナス(英語版)は、アラン・ムーア原作の『スワンプシング』誌で『ポゴ(英語版)』のパロディを描き、童話的なファンタジーとリアリスティックなホラーを両立させる手腕を見せたことで起用された。 A Game of You かつてバービーは毎夜のようにファンタジー世界で王女となる夢を見ていたが、夫ケンと離婚した今では夢を見ることがなくなっていた。しかし、親友のトランスジェンダー女性ワンダとともに外出したバービーの前に夢での忠実な家臣が現れ、謎の敵「カッコー」を倒すよう懇願しながら息絶える。その夜バービーは眠りの中で名前のない国に帰還し、喋る動物たちを供として旅立つ。 現実世界では、カッコーに服従する男性がバービーのアパートを襲う。しかし隣人の一人テサリーは躊躇せず男を殺す。古代から生きる魔女であったテサリーは月降ろし(英語版)の儀式を行って夢への道を開き、ほかの隣人女性とともにカッコーを倒しに向かう。ワンダは肉体的には男性であるため月の道を通ることができず、アパートに置き去りにされる。 バービーは逃避行の中で密告され、カッコーの下へ引き立てられる。その姿は子供のころのバービーとそっくりだった。助けに現れたテサリー達も愛らしい姿に油断して催眠にかけられる。カッコーは少女の空想に寄生する生き物だった。かつて想像力豊かな子供だったバービーは、夢の領域の離れ小島に打ち捨てられていた国を見つけ、自分がお姫様となれる場所を作り上げた。カッコーはそこに忍び込んで成長を遂げ、今や巣立ちを切望していた。 カッコーに操られたバービーは夢の終わりを宣言する。古い契約に従ってモルフェウス(ドリーム)が現れ、国とその住人を砂に返していく。テサリーはカッコーへの報復を望むが、ドリームから短慮を戒められる。バービーはただ自身と友人たちを現実に送り返すよう願い、カッコーが歓喜とともに飛び去るのを見送る。 現実のニューヨークではテサリーが月を動かした余波で大嵐が発生していた。ワンダはアパートの崩落で命を落とし、保守的な家族によって男性として葬られる。バービーは墓碑に記された出生名をこっそり「ワンダ」に書き換えながら、どんな平凡な人間にも心の中に秘密の世界があるのだと語りかける。 この号で登場したテサリーは第9巻でドリームに降りかかる運命の一端を担う。
※この「第5巻: ゲーム・オブ・ユー」の解説は、「サンドマン (ヴァーティゴ)」の解説の一部です。
「第5巻: ゲーム・オブ・ユー」を含む「サンドマン (ヴァーティゴ)」の記事については、「サンドマン (ヴァーティゴ)」の概要を参照ください。
- 第5巻: ゲーム・オブ・ユーのページへのリンク