突貫工事のデモ製作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 02:29 UTC 版)
「Anthem (ゲーム)」の記事における「突貫工事のデモ製作」の解説
2016年末まで、『Anthem』は約4年間何らかの形でプリプロダクションの状態にあった。一般的なゲーム開発でこれだけの時間が経過すると、ヴィジョンも固まり本格的な制作に入る頃である。『Anthem』に関わった者には、「この頃からゲームがダメになった」「『ME』でもあったように、期限間近で『クランチタイム(過酷な労働状態)』に入るのではないか」と感じ始めた者もいた。何人かの開発者は、これらの懸念を取締役に持ち込んだが、無視されたと語っている。「『DA:I』や『ME:A』でも同じような問題が起こっていて、同じミスを繰り返している」と開発者は語る。 数ヶ月の間に『Anthem』では、『Destiny』や『The Division』の様なルートシューターのアイディアや技術を取り入れ始めていた。バイオウェアでは『Destiny』の名を出すのもタブーになっており、はっきり「これは『Destiny』ではない」と言われた開発者もいたらしい。しかし開発者はまた、「(『Destiny』を開発した)Bungieなどはその市場のリーダーと言える存在で、彼らのやっていることはよく見ておくべきで、多様な銃の感触などのデザインスキルは、RPGを作ってきた我々には無かった」とも語っている。 バイオウェアの伝統で、クリスマス休暇にスタッフ全員が家に持ち帰れるデモを作るというのがあり、2016年は『Anthem』の番だった。その時点で飛行要素は排除することが決まっていたが、どうすれば楽しくプレイできるかよく分からず、平地でエイリアンを撃ち続けるといったものになっていた。2017年3月に『ME:A』が発売され、バイオウェアの大部分のスタッフが『Anthem』に参加できるようになった。同時期に、DICEの創業者の一人で、EAの副社長のパトリック・ソダーランドがクリスマスデモをプレイした。当時の事情を知る者たちによると、ソダーランドは「これはゲームとして約束されていたものとは違い、受け入れられない」と語り、特にグラフィックに失望していた様子だった。ソダーランドはバイオウェアの上部スタッフをFrostbiteを開発したDICEのあるストックホルムに呼び寄せ、DICEの開発者たちと会談させた。そしてその後、ソダーランドに見せるための「とにかく見栄えの良いデモ」を作るため、約6週間に渡る作業が始まった。 何年もの間『Anthem』のチームは、飛行要素を削除したり追加したりを繰り返していた。しばらくは1つのスーツだけが飛行できるという予定だった。しかしオープンワールドのゲームで、垂直方向の自由度を許されているのはほとんど無い。これには、プレイヤーが世界の外に出てしまわないための山や壁を作れなくなるという理由がある。重要地点を飛び越えて気づかないという心配もあった。それでもソダーランドの好感触を得るため、結局『Anthem』にとって唯一の際立つ特徴だった飛行要素を復活させることにした。その時点で開発者は「これがゲームに恒久的に残るものなのか、ソダーランドに見せるためだけに入れたものなのか分からなかった」という。 2017年の春、ソダーランドはエドモントンのバイオウェアのオフィスに向かった。『Anthem』チームは、完全に作り直し飛行要素を復活させたデモに自信はあったが、前回デモの失敗と『ME:A』も失敗と言っていい反応だったことから、これにプロジェクトの存続がかかっていると緊張が高まっていた。改めてデモを観たソダーランドは、「凄かった、もう一度見せてくれ」「これぞ私が求めていたものだ」と感激した。このデモが、数週間後にE3 2017で公開したゲームプレイトレイラーの基礎となった。 ところがE3での発表の準備が整った頃、EAからそれまでのタイトルだった「Beyond」では権利の確保が難しすぎるため、名前を変える必要があると通告された。そしてバイオウェアは新たに「Anthem」というタイトルにした。これは予備としてとっておいた別の名前の一つだったらしい。しかし、チームの中にはこれまで「Beyond」という名前で製作してきたのには内容的にも意味があったのに、特に意味が感じられない「Anthem」になるのには不満もあったらしい。この後チームは、どうやって「Anthem」をゲームに絡めるかを考えなければならなくなった。 E3の後で、ようやく開発者たちは自分たちが作っているのがどういうゲームか分かってきたという。しかし、実はまだその時点でもゲームは試作段階にあり、E3のデモも後に発売されたゲームとは大きく異なっており、他の多くのこともまだ決まっていなかった。それでもバイオウェアは、『Anthem』を2018年秋に発売すると発表してしまった。しかし裏では1つのミッションもまともに実装されておらず、事態は悪化の一途を辿っていた。
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