盲ろう者のコミュニケーション手段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/02 15:55 UTC 版)
「盲ろう者」の記事における「盲ろう者のコミュニケーション手段」の解説
盲ろうとなる経緯や障害の程度、生活環境によって、盲ろう者のコミュニケーション方法は多様である。 日本で用いられているコミュニケーション手段は、以下のように大別して整理できる。 点字を応用したコミュニケーション方法点字による筆談 指点字(両手の6本の指を点字タイプライターのキーに見立てて、通訳・介助者が点字を打つ) ブリスタ(ドイツ製の速記用タイプライター。点字を打つと、紙テープに点字が打たれて出てくる) 手話・指文字を応用したコミュニケーション方法触読手話(手話を触って読み取る。「触手話」とも) 弱視手話(盲ろう者の見え方に応じた距離や手話表現の大きさを調整しながら手話をする。「接近手話」とも) 五十音式指文字(聴覚障害者の間で一般的に使われている日本語式指文字を盲ろう者に見せたり触らせたりして伝える。日本式指文字だけを用いて通訳を受ける盲ろう者もいるが、実際には手話と一緒に補助的に使われることが多い) ローマ字式指文字(アメリカ式アルファベット指文字をローマ字表記で表し、盲ろう者の片方の手の平に触らせて伝える。手の動きが小さく、少ない数の文字で表現できる利点がある。また、ローマ字の母音と子音の組み合わせは、点字の構成に共通する部分が多く、点字学習の導入として応用できることから、盲ろう児の教育に用いられる場合もある) 墨字を応用したコミュニケーション方法手書き文字(「てのひら書き」とも。通訳者が盲ろう者の手のひらに指先でひらがな、カタカナ、漢字などを書いて伝える。ひらがな書きかカタカナ書きが一般的だが、人によっては漢字を使っても大丈夫な人もいる) 筆談・要約筆記・拡大文字要約筆記(視力が残っている場合、紙などに文字を書いて盲ろう者に伝える方法。その盲ろう者の見やすい大きさ、太さ、間隔の文字を書いて伝える) パソコン要約筆記(通訳者がパソコンを用いて入力し、その画面を盲ろう者が自分の読みやすい大きさや色、背景色に設定して読む。近年では、これを点字ディスプレイに表示して読む人もいる) 音声を応用したコミュニケーション方法音声通訳(少し聴力が残っている場合、その人に聞こえやすいよう、耳元や補聴器のマイク(集音器)に向かって話す方法。聞こえ方にあわせて、声の高低、強弱、速さ等に十分な配慮が必要) 盲ろう者のための教育やリハビリテーション制度が未整備であるため、特に1990年代までの日本国内では盲ろう者のための「共通の」コミュニケーション方法は作り出されず、そうした試みも失敗している。したがって、各地の盲ろう者個人やその家族・周囲の支援者の努力と工夫によってそれぞれのコミュニケーション方法を生み出し、ルール化していったといってよい。 現在、盲ろう者のコミュニケーション方法として知られる上記の手段は、そうした「個人(とその周囲)によるルール化」が、1990年代以降活発化した盲ろう当事者・支援者らの交流によって普及していったものである。また、複数のコミュニケーション手段を状況や相手に応じて使い分ける盲ろう者も少なくない。 インターネットの普及に伴い、電子メールやチャットも、盲ろう者の貴重なコミュニケーション手段となっている。
※この「盲ろう者のコミュニケーション手段」の解説は、「盲ろう者」の解説の一部です。
「盲ろう者のコミュニケーション手段」を含む「盲ろう者」の記事については、「盲ろう者」の概要を参照ください。
- 盲ろう者のコミュニケーション手段のページへのリンク