現在のRISC
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 07:19 UTC 版)
2009年現在では、「RISC対CISC」という単純な優劣論争は、技術的にはもはや意味を持たない。x86などの代表的なCISCプロセッサは内部的にRISCのアーキテクチャを段階的に取り入れ、逆に代表的なRISCプロセッサは命令数の追加を続けているためである。 RISCの当初の設計思想は「少ない簡潔な命令数による、回路設計の単純化とパイプライン効果の最大化によって、性能向上と低コスト化、更には容易な動作周波数の向上を実現する」ものであった。しかし現在の主要なRISCプロセッサは、商用計算用の10進数演算や、暗号化、仮想化、アウト・オブ・オーダー実行などの複雑な命令を追加し続けている。この背景には、当初より幅広い用途や新しい機能が求められていること、性能を確保したまま多数の命令を実装できる半導体技術と回路設計技術の向上、単純な動作周波数の向上には消費電力や発熱などの副作用や限界があった。以降はマルチコア化へ性能向上の舵を切ることになる。このため現在では高性能なプロセッサの開発は、開発費用も製造費用(設備投資など)も膨大になり、大規模なチップメーカー以外はハイエンドのプロセッサの開発・製造が困難となっている。 とはいえ、命令数と回路規模以外は依然としてRISCの設計思想が強く残る。命令は32ビットチップこそ固定小数32ビット、浮動小数64ビット、SIMDが128ビットとなるが各ユニットで常に固定長、アドレッシングモードもレジスタ - レジスタとロード・ストアの二種しかないことに変わりなく、レジスタはIA-64は別として、x64と比較しても倍の32本以上を持つ。こうしたこともあって、プロセッサの分類として、x86やSystem zなどを「CISC」、MIPS・POWER・SPARCなどを「RISC」と呼ぶ事は、なお一般的である。 市場別には、パーソナルコンピュータとメインフレームでは、過去の命令セットとの後方互換性が重視され、CISCがほぼ独占している。UNIXサーバー市場では、ローエンドはCISC(主にx86)、ハイエンドはRISC(POWER、SPARCなど)が多数派である。UNIXワークステーションにおいてもほぼRISC携帯電話・ゲーム機(ただし2013年にPlayStation 4とXbox Oneはx86になった)・ネットワーク機器など組み込み市場では、命令セットの後方互換性は重視されず、低消費電力かつ高性能なプロセッサが強く求められ、32ビット・64ビットプロセッサではほぼRISCが独占している(ARM、MIPS、PowerPC、SuperHなど)。
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