現在におけるアパルトヘイト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 13:08 UTC 版)
「アパルトヘイト」の記事における「現在におけるアパルトヘイト」の解説
パレスチナ問題では、ユダヤ人によるアパルトヘイトに近い行為が問題視されている。何百万人ものパレスチナ人(アラブ人)が、教育、自由な移動、雇用、健康の提供といった基本的な権利を否定されている。南アフリカの黒人が白人ではないという理由で差別されたように、パレスチナ人はユダヤ人ではないという理由で差別されている。 イスラエルは、アパルトヘイトとする批判を、反ユダヤ主義に基づく差別と非難している。 イスラエルは2018年7月19日に「ユダヤ国民国家基本法」を制定した。基本法(憲法に準じる最高法規)で、他民族・宗教に対するユダヤ人の優越が明記され、ユダヤ人は唯一の民族自決権を持つ存在とされ、ヘブライ語を唯一の公用語とした。 こうしたイスラエルの動きに対して、イスラエルの人権団体・ベツェレムは2021年1月12日、パレスチナ自治区での実効支配体制を含め、"This is Apartheid"(これはアパルトヘイトだ)と非難声明を出した。4月27日、米国に本部を置く人権団体・ヒューマン・ライツ・ウォッチが、イスラエルの政策は「アパルトヘイトと迫害の罪に該当」するという内容の報告書を発表した。両団体は、イスラエルの政策がアパルトヘイトに該当する理由を、以下のように挙げている。 政府:イスラエルはパレスチナを実効支配している。パレスチナ自治政府はイスラエルに従属しており、イスラエルの許可無くしては限られた権限しか行使できない。 選挙権:ユダヤ人は居住地を問わず、イスラエル国外に在住していても、イスラエルの完全な選挙権を有する。一方で、パレスチナ政策に対する言論は制限されている。非ユダヤ人住民は、1967年以前より引き続いてのイスラエル領居住者のみ完全な選挙権を有し、東エルサレム居住者は地方参政権のみ有する。その他の被占領民は選挙権を持たない。また、パレスチナ自治政府の行う選挙・政治活動への参加も、東エルサレムおよびヨルダン川西岸地区の占領地の被占領民は禁止されている。占領地のパレスチナ人は、ほとんどの政治的発言は煽動と見なされ、デモは許されず、多くの団体が結社を禁止されている。 居住・移動:ユダヤ人は帰還法により、世界のどこにいてもイスラエルに移住することができ、ハマースが実効支配するガザ地区、およびオスロ合意で定められた「A地区」を除き、全ての支配地域で自由に居住・移動ができる。パレスチナ人は、本人や両親・祖父母がイスラエル領の出身だとしても、一度出生地から移住すれば(数年程度の出稼ぎを含む)、原則として二度とイスラエル支配地域に戻ることは許されない。例外は、イスラエル支配地域居住者のパレスチナ人と結婚し、イスラエル政府の許可を得ることである。また、ヨルダン川西岸地区とガザ地区在住者で結婚する場合、ヨルダン川西岸地区への居住許可が出ることは稀で、ガザ地区への移住を要求される。また、通常は非ユダヤ人であっても、イスラエル人と結婚した者はイスラエルの市民権・永住権を得られるが、占領下のパレスチナ人に対してはこれも禁止されている。非ユダヤ人の私有や共有地のほとんどは、ユダヤ人のために没収され、パレスチナ人の利用が許される面積は3%以下であり、さらに開発も厳しく制限している。また、イスラエルはユダヤ系市民のために数百の自治体を設立したが、非ユダヤ人住民に対しては、ベドウィンの遊牧地を没収して定住を強制した例を除き、一つの自治体設立も許していない。ユダヤ人自治体は、非ユダヤ人の移住を拒否する権限が与えられている。パレスチナ人被占領民は、他地域への移動はもちろん、イスラエル国外への出国も、全てイスラエルの許可を必要とする。特に、ガザ地区在住者は、イスラエルが人道上必要と判断しない限り、移動を許されない。
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