特徴的な解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 18:10 UTC 版)
アメリカ合衆国出身でインドに帰化した社会学者、人権活動家であるGail Omvedtは、以下のように述べている。 アンベードカルの仏教は見た限りでは、信仰によって受け入れられた仏教、すなわち帰依を行い、聖典を受け入れた人たちのものとは異なっている。このことは、その基礎からして大変明らかである。アンベードカルの仏教は、テーラワーダ(上座部)であれ、マハーヤーナ(大乗)であれ、ヴァジュラヤーナ(密教)であれ、これらの聖典を体系的には受け入れていない。そこで次のような疑問が明らかに生じてくる。「四番目の乗り物(fourth yana)であるナヴァヤーナ(新しい乗り物)、〔すなわち〕ある種の近代文明的に解釈されたダンマは、本当に仏教という枠組みのなかに含めることが可能なのだろうか?」 Omvedtによれば、アンベードカルと彼の仏教運動は仏教の中心的教義の多くを否定している。Christopher QueenとSallie Kingが述べるところによれば『ブッダとそのダンマ』におけるアンベードカルの仏教には、宗教的な近代主義のすべての要素が見られ、同書は伝統的な戒律と実践を捨て去り、社会参画仏教がそうであるように、科学、積極的行動主義、社会的変革を導入している。 彼らは多くの点で、独自の仏教解釈を行っている。特筆すべきは、彼らが釈迦牟尼仏を単なる宗教的指導者ではなく、政治的かつ社会的改革者として強調することである。かれらは次のようなことに言及する。すなわち、ブッダが僧団内でのカーストを無視するように命じたこと、そして当時の社会的不平等について批判していることである。アンベードカルによれば、個人の不幸な境遇は、カルマの結果、あるいは無知(ignorance)と執着(craving)のせいだけではなく、「社会的な搾取と物質的貧困」つまり他者による無慈悲な行為の結果でもある。 アンベードカルの復興運動による仏教徒の殆どは、上座部仏教をベースに、大乗仏教や密教の影響を受けた折衷主義的な仏教を信奉している。桂紹隆はアンベードカルの『ブッダとそのダンマ』は『浄土論』を始めとする大乗仏教の影響を受けていると論じている。一方、現在インド仏教組織の頂点に立っている佐々井秀嶺は真言宗智山派で得度はしているが日本の宗派仏教に批判的なこともあり、アンベードカルの仏教のことを大乗でも小乗でもなくそれらを超えた「極大乗」の教えであると規定している。
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