注湯の設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 04:59 UTC 版)
取鍋は、傾動式・ダム式・lip-axis式・底注ぎ式の設計に注湯を大別できる。 傾動式(lip pour)の設計では、取鍋が傾いて溶湯が水差しから出る水のように注湯される。 ダム式(teapot spout)の設計では、ダムやティーポットのように取鍋の底部から溶湯を取り出して、側縁の注湯口を介してそれを注ぐ。溶湯内の不純物は金属の頂部で形成されるため、取鍋の底部から取り出すことにより不純物が鋳型に注がれない。底注ぎ式の背景にも同じ思想がある。 lip-axis式の取鍋は、注湯口のより先端付近に容器の旋回点がある。そのため、取鍋が回転する時に実際の注湯位置が殆ど動かない。lip-axis式の注湯は、可能な限り工程を自動化する必要がある注湯システムで使われることが多く、作業員は離れた所で注湯操作を制御する。 底注ぎ式(bottom pour)の場合、取鍋底部の注湯孔にストッパー棒が差し込まれている。注湯する際は、ストッパーが垂直に引き上げられて取鍋の底から金属が注湯される。注湯を止める際はストッパー棒を孔に挿し戻す。製鉄産業にある大型の取鍋では、タップ孔の下部にスライド式ゲートを用いる場合もある。 取鍋は、上部が開いているものもあればカバーがついているものもある。カバーが付いているものでは、(取り外せるものもあるが)ドーム型のフタで輻射熱を保持できるようにしてあり、上部が開いているタイプよりも熱が逃げるのが遅くできる。小さな取鍋はカバーが無いことが多いが、セラミック布で代用することができる。 中型や大型の取鍋は、トラニオンと呼ばれる回転軸つきのクレーンに取り付けられる。取鍋を傾けるにはギアボックスが使用され、これは通常ウォームギヤである。ギア機構は大きなハンドルで手作業で操作したり、電気式や空気圧式のモーターで操作される。モーター操作の回転は、作業員が安全な距離を取ったうえで無線リモコン等を介して取鍋の回転制御を可能にしてくれる。また全体的な鋳造工程に有益かもしれない回転速度を保ってくれる。他にもモーター操作は作業員に要求される労力を削減し、作業員が疲れることなく長時間に及ぶ溶湯の大量搬送および注湯を可能にしている。取鍋に手動操作のギアボックスが設置されている場合、最も一般的に使われるのはウォームギヤの設計である。これは大半の実践状況で取鍋の傾斜速度を調節するのに内部摩擦ブレーキを必要としないセルフロックのためだと考えられる。他のギアシステムも使用可能だが、作業員がハンドルから手を離した場合に取鍋を保持できるブレーキシステムを追加で取り付ける必要がある。 lip-axis式取鍋はまた、取鍋を傾けるのに油圧ラムを使うこともできる。最大規模の取鍋にはギヤが無く、注湯するには特殊なウィンチクレーン2基を使う。主要ウィンチが取鍋を運び、第二ウインチは取鍋底部の取っ手と係合しており、第二ウインチを巻き上げることで取鍋が傾動する。 取鍋は、溶融金属に合金を添加するなど特定の用途向けに設計されていることも多い。また、取鍋の底部に多孔素材のプラグを挿入してある場合もあり、それで不活性ガスを取鍋越しに泡立たせて合金化などの金属処理を促進できるようになっている。
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