法的問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 07:33 UTC 版)
「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」の記事における「法的問題点」の解説
アーヴィングがイギリス裁判所への訴訟提起を決定したことは立証責任の転換という点で彼を優位にした。アメリカ名誉毀損法では、中傷されていると主張する公人が、問題の言論が中傷的であり、表現者が間違っており、表現者が真実性・虚偽性について現実的悪意(actual malice)か未必の故意(reckless disregard)を抱いていることを立証しなければならない。さらに、信頼できる情報源に依拠していることは(たとえ虚偽だと証明しても)被告にとって有効な防御となる。これとは対照的に、イギリス名誉毀損法は原告にその言論が中傷的であることを示すことしか要求していない。その言論が相当程度に真実(substantially true)あることを証明する立証責任は被告側に課されており、情報源に依拠していることは何の意味も持たない。 リップシュタットの著述は明らかに中傷的であり、被告側は自分たちが誤解されたとは主張することができなかった。したがって、もし被告側が著述の中傷的内容が真実であると証明できなかった場合、彼らは名誉毀損により有罪になることとなった。リップシュタットはそのような評決がアーヴィングの主張に正当性を与えることを恐れ、自身を弁護せずにはいられないと感じた。このような状況に至って、あるコメンテーターは、当初はアーヴィングが「無視されるかもしれない」との意見を出していたものの、後に「リップシュタットは法廷で自分を弁護するしかなくなった」と書いている。 被告側が立証に成功するためには、リップシュタットがアーヴィングに行った中傷的な主張の全てが相当程度に真実であると証明する必要があった。判事が理解した真実性を証明すべき主張内容は以下の通りだった。 アーヴィングはヒトラー一派の弁解者であり、ヒトラーの罪を免れさせヒトラーがユダヤ人に対して同情的であったかのように描写するという目的のために、証拠の歪曲、文書の操作と曲解、データの不当表示と証拠へのダブルスタンダードの適用を用いている。 アーヴィングはホロコースト否認論の最も危険なスポークスマンの一人であり、彼は数多くの場で、ナチスがユダヤ人抹殺の意図的な計画に従事していたことを否定し、そのようなユダヤ人抹殺遂行の手段としてアウシュビッツでナチスが毒ガス室を用いたというのはユダヤ人の欺瞞だと主張している。 アーヴィングはホロコーストの存在を否定する中で、証拠を誤って述べ、情報源を間違って引用し、統計を偽造し、情報の解釈を誤り、歴史的証拠を自身のネオ・ファシスト的な政治路線とイデオロギー的信条に合致するように捻じ曲げている。 アーヴィングはあらゆる過激かつ反ユダヤ主義的な団体代表あるいは個人と同盟しており、あるときにはテロ組織の代表が発言することになっている会議への出席に同意している。 アーヴィングは自らが結んだ契約に違反して許可なしにゲッベルスの日記のいくつかのマイクロフィルムを取り去り国外に輸送し、それによって資料を現実的な損傷の危険に晒した。 アーヴィングは歴史家としては信用に値しない。
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