法人著作物とは? わかりやすく解説

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職務著作

(法人著作物 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/27 03:28 UTC 版)

職務著作(しょくむちょさく、: work made for hire)とは、職務の一環で文芸・音楽・映像・ソフトウェアといった著作物を創作した場合、創作した個人本人ではなく、創作を指揮・監督した雇用主や業務委託者が著作権を有するとする著作権法上の概念である。また、このような著作物を職務著作物と呼ぶ。個人(自然人)の対義語として法人が用いられることから、法人著作: corporate authorship)と呼ばれることもあるが[1]、法人以外の団体組織も職務著作の概念に含まれる[注 1]


  1. ^ 法人以外の団体組織には、たとえば政府など公共団体や[2]、投資ファンドにみられる投資事業有限責任組合など法人格を有しない組合がある。
  2. ^ 世界170ヶ国以上(2019年10月時点)が加盟する著作権の基本条約であるベルヌ条約では[5][6]同条約 第5条(2) にて無方式主義を定めているため。
  3. ^ ベルヌ条約では第7条で50年間以上と規定している。これを上回る形で、欧州連合(EU)では1993年の著作権保護期間指令(93/98/EEC)によって原則70年間を規定している[14]。また米国では1998年のソニー・ボノ著作権延長法によって、原則は死後70年間とした上で、職務著作については公表日から95年間または創作日から120年間のいずれか短い方を適用すると規定されている[15]
  4. ^ 米国の代理法におけるindependent contractorは、「独立の契約者」[20]または「独立の請負人」[21]と訳される。
  5. ^ 米国における代理法とは、労働法や会社法とも関係する広範な概念である[28]。代理人は受託者英語版 (fiduciary) であるとされ[28]、フィデュシャリ―とは他者の利益のために誠実に振る舞う者を指す[29]。金融・財務を例にとると、企業が会計事務所に監査業務を委託したり、資産運用に関してフィナンシャルアドバイザーに助言を求めるケースなどもフィデュシャリーの概念に含まれる[30]
  6. ^ 報酬の低さから、初演からたった6夜にしてブシコーはウィンター・ガーデン劇場英語版での上演をキャンセルしている。しかし、劇場側はブシコーを雇用した上で戯曲を創作し、さらに別途俳優 兼 監督としてブシコーを雇ったことから、職務著作が劇場側にあるとみなし、ブシコー出演なしで劇場が『The Octoroon』の上演を継続した。これに対しブシコーが、上演差止と損害賠償を求めて提訴した事件である。雇用は書面ではなく口頭での合意であること、ならびにブシコーの創作性を認め、劇場側の職務著作の主張は棄却された[38]
  7. ^ 関連判例として、Cass. civ. 1, 12 April 2005, 03-21095 を参照のこと[46]。写真の初回掲載時は勤務先から給与の形で写真撮影者に支払われていたが、退職後にも同一の写真が繰り返し再掲されたことから裁判となった[47]
  8. ^ 関連判例として、Cass. civ. 1, 23 January 2001, 98-17926 を参照のこと[46]。ジャーナリストが地方紙La Montagne英語版に寄稿した内容が、別の地方紙Le Berry républicainフランス語版上で複製されたとする事案である[48]
  9. ^ 関連判例として、Cass. civ 1, 12 June 2001, 99-15895 を参照のこと[46][49]
  10. ^ 関連判例として、Court of Appeal of Versailles, 18 November 1999, Juris-Data no. 1999-108392 を参照のこと[50]
  11. ^ 関連判例として、Court of Appeal of Paris, 20 September 2007, Juris-Data No. 2007-353089、およびHigh Court of Paris, 30 September 2011, 77 RLDI No. 2548 (2011) を参照のこと[50]
  12. ^ ただし委嘱時に著作権を委嘱元(肖像画であれば発注した顧客)に帰属させる契約を個別に締結することもできた[55]
  13. ^ ただし1988年のCDPA以前も、間接的・部分的にではあるものの1956年法で虚偽の著作者名を表示すること(false attribution)に関する規定は存在していた[56]
  14. ^ 最二小判平成15・4・11(判時1822号133頁、及び労判849号23頁収録)[67]
  1. ^ a b 村井 2004, p. 195.
  2. ^ a b 作花 2018, p. 174.
  3. ^ 作花 2018, pp. 166–167, 174.
  4. ^ 山本 2008, p. 68.
  5. ^ Contracting Parties > Berne Convention (Total Contracting Parties : 177)” [ベルヌ条約 原条約加盟国数: 177(閲覧時点)] (英語). WIPO. 2019年10月15日閲覧。
  6. ^ Contracting Parties > Berne Convention > Paris Act (1971) (Total Contracting Parties : 187)” [ベルヌ条約 1971年パリ改正版加盟国数: 187 (閲覧時点)] (英語). WIPO. 2019年10月15日閲覧。 “システムエラーにより16ヶ国がダブルカウントされているため、正確には閲覧時点の加盟国数は171ヶ国(署名のみで批准未済のレバノンを含めると172ヶ国)である。”
  7. ^ 作花 2018, pp. 174–187.
  8. ^ Leaffer 2008, pp. 267–275.
  9. ^ 井奈波 2006, pp. 10–12.
  10. ^ a b 作花 2018, pp. 175–176.
  11. ^ 井奈波 2006, pp. 9–13.
  12. ^ Goldstein & Hugenholtz 2013, pp. 6–7.
  13. ^ a b c d e f g Goldstein & Hugenholtz 2013, pp. 254–256.
  14. ^ Council Directive 93/98/EEC of 29 October 1993 harmonizing the term of protection of copyright and certain related rights”. EUR-Lex. 2019年10月16日閲覧。 “"Article 1-1: The rights of an author of a literary or artistic work within the meaning of Article 2 of the Berne Convention shall run for the life of the author and for 70 years after his death, irrespective of the date when the work is lawfully made available to the public."”
  15. ^ 17 USC 302: Duration of copyright: Works created on or after January 1, 1978”. The Office of the Law Revision Counsel in the U.S. House of Representatives. 2019年10月16日閲覧。 “AMENDMENTSのセクションで1998年改正法によって、著作権保護期間が50年から70年に延伸した旨が記述されている (1998-Subsecs. (a), (b). Pub. L. 105–298, §102(b)(1), (2), substituted "70" for "fifty".)。”
  16. ^ 文化庁 2007, p. 4.
  17. ^ 文化庁 2007, p. 69.
  18. ^ WIPO Copyright Treaty (WCT) (Authentic text)” [WIPO著作権条約 (公式原文)] (英語). WIPO (1996年12月20日). 2019年10月15日閲覧。
  19. ^ a b c Leaffer 2008, p. 267.
  20. ^ a b Leaffer 2008, p. 308.
  21. ^ 山本 2008, p. 76.
  22. ^ Leaffer 2008, p. 269.
  23. ^ Leaffer 2008, pp. 269, 308.
  24. ^ Leaffer 2008, p. 268.
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  26. ^ a b 山本 2008, pp. 76–78.
  27. ^ United States Supreme Court COMMUNITY FOR CREATIVE NON-VIOLENCE v. REID(1989), No. 88-293”. FindLaw. 2019年10月16日閲覧。
  28. ^ a b アメリカ代理法 <第2版> アメリカ法ベーシックス 7 樋口 範雄 著”. 弘文堂. 2019年10月16日閲覧。 “「アメリカ代理法のカバーする領域は、エージェントとは通常呼ばれないような人にまで及んでいます。本書は、労働法と会社法の礎であることからビジネスにおける法的な基礎であり...(略)」”
  29. ^ fiduciary”. American Heritage Dictionary of the English Language, Fifth Edition. The Free Dictionary. 2019年10月15日閲覧。
  30. ^ Kagan, Julia (2019年6月25日). “Fiduciary”. Investopedia. 2019年10月16日閲覧。
  31. ^ Fisk 2003, pp. 6–7-- アメリカン大学ロースクールのピーター・ジャシー英語版からの孫引き。
  32. ^ Fisk 2003, pp. 7, 67.
  33. ^ a b Fisk 2003, p. 7.
  34. ^ Fisk 2003, pp. 7–8.
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  40. ^ Fisk 2003, p. 62.
  41. ^ Directive 2009/24/EC of the European Parliament and of the Council of 23 April 2009 on the legal protection of computer programs (Codified version) (Text with EEA relevance)” [2009年4月23日に欧州議会および欧州連合理事会によって共同採択されたコンピュータプログラムの法的保護に関する2009/24/EC指令 (成文化版) (EEAにも適用)] (英語). 欧州連合官報 L 111, 5.5.2009, p. 16–22. EUR-Lex. 2019年10月17日閲覧。
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  47. ^ Cour de Cassation, Chambre civile 1, du 12 avril 2005, 03-21.095, Publié au bulletin”. レジフランス. 2019年11月15日閲覧。
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  50. ^ a b Spitz 2014, pp. 53–54.
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  52. ^ a b c 作花 2018, p. 176.
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  57. ^ Tate Legal and Copyright Department. “Digitisation and Conservation: Overview of Copyright and Moral Rights in UK Law”. Tate. 2020年9月7日閲覧。 “"Right to object to false attribution (being named in respect of a work not created by the author)"”
  58. ^ Flint & Thorne 1999, pp. 173–174.
  59. ^ Flint & Thorne 1999, p. 178.
  60. ^ Flint & Thorne 1999, p. 183.
  61. ^ Flint & Thorne 1999, p. 188.
  62. ^ 著作権法 最終更新: 平成三十年七月十三日公布(平成三十年法律第七十二号)改正 第十五条(職務上作成する著作物の著作者)”. e-Gov法令検索 (2018年7月13日). 2019年10月15日閲覧。
  63. ^ a b 作花 2018, pp. 176–177.
  64. ^ 作花 2018, pp. 177–178.
  65. ^ 作花 2018, pp. 178–179.
  66. ^ 作花 2018, p. 180.
  67. ^ 小泉直樹田村善之駒田泰土上野達弘 (編)「著作権判例百選」『別冊ジュリスト』第6版、有斐閣、2019年、 48–49 (茶園成樹による解説)、 ISBN 978-4-641-11542-2
  68. ^ 作花 2018, p. 183.
  69. ^ 村井 2004, pp. 189–194.
  70. ^ a b Dresden, Matthew (中国の知的財産権法専門) (2017年7月18日). “China Patents, Copyrights, and Works Made for Hire” [中国の特許、著作権と職務著作物について] (英語). Harris Bricken McVay Sliwoski, LLP (法律事務所). 2019年11月9日閲覧。
  71. ^ IP Law in China: Works for Hire (PDF)” [中国の知的財産法: 職務著作について] (英語). Fenwick & West LLP (法律事務所). 2019年11月9日閲覧。


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