江川との和解
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小林は1999年発行の『元・巨人 ジャイアンツを去るということ』の中で、江川について、「江川個人に対する恨みつらみはない。ただ、他人の人生を変えてしまったことは、まぎれもない事実です」「一人の人間のとった行動が、別の誰かの人生を全く違う方向に押しやってしまったわけですよ。そういうわだかまりみたいなものはやっぱりあります」と述べた上で、次のように語っていた。 結局、価値観の違う人間なんだと思っています。自分がこうしたいという望みがあるときに、それは自分の手でつかむものであって、何かを踏み台にしたり、誰かを犠牲にしたりして得るものではない、というのが本質的に僕の考え方だから。だから、僕には彼がまったく異質な人間としか思えない。よく、あのときのバッシングによって、彼も苦しみを味わったんだと言う人がいる。でも、それは自分が前向きに選んだことでしょう。誰かに「そうしなさい」と言われてしたことじゃなくて。……だから本人は、そういう覚悟の上で、やらざるを得ないでしょう。そこでバッシングを受けたから可哀想なんじゃなくて、彼の立場からすれば、それは甘んじて受けるという覚悟で入らなければいけない。初めから、そうなるのはわかっていたことでしょう。 — 矢崎1999、34-35頁。 2007年の秋、博報堂が黄桜のCMを手掛け、江川と小林が日本酒を飲みながら対談する企画が持ち上がった。当初小林は「いまさらコマーシャルに出るつもりはない」「俺がやると言っても、江川君はどうなの?断ると思うよ」としたが、江川の「小林さんさえよければやりたい」という意向を聞いて承諾した。CMのテーマは両者の和解であった。 事前打合せ無しのまま対談収録がスタート。小林と江川はそれまで殆ど直接会話をしたこともないことから、江川は「謝罪」をテーマに収録に臨み、「本当に長い間、申し訳ございませんでした」と乾杯前に謝罪した。それに対し小林は「謝ることないじゃん!」と返答し、「しんどかったやろなぁ。俺もしんどかったけどな。二人ともしんどかった」と江川に語り掛けた。また、小林は本編で盃を傾けながら「(今回のCM出演で)ホッとする時間を作って頂けた。残りの人生が少し違ったものになるんじゃないかな」と話している。 小林は対談後、江川について以下のように語っている。 若い頃って、自分がしんどいことばかり考えているんですよ。だけど、たぶん江川も、すごくしんどかったんですよね。もしかしたら俺よりも苦しい人生を送ってきたのかもしれない…。だから結末をつけてやらなきゃいけないかなって思ったね。彼のしんどさに結末をつけないと、俺も結末がつかないからね。あと江川と話して、もうひとつ解ったことがあるんだ。それは、あいつにも趣味がない。俺にも趣味がないように。事故が恐いからって、週末に家族をドライブに連れていこうともしなかったんだ。俺たちには、野球がすべてだった。家族を犠牲にしてまで、俺たちは野球をやっていた。あいつも夢中で野球をやっていたんだなぁって実感した。 — 近藤2010、197頁。
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