概念と実例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/30 15:42 UTC 版)
ヒトが文化的観念をもち、人工的な構築物を形成し始めた際、意識的に事象や生活圏周辺に意味を持たせ維持しようとした場所が文化的空間の原初である。原始宗教における聖域や家屋・集落周辺の収穫地がそれで、前者は精神文化的な要素、後者は生活の糧を得るための自然環境も含んでいる。空間としては無形だが、そこにある有形の事物も対象となる。 文化的空間は民族・地域・時代や価値観などアイデンティティーにより定義が異なる抽象的対象である。典型的な例としてバヌアツの世界遺産ロイ・マタ首長の領地が上げられる。構成資産であるロイ・マタの住居跡と墓地はバヌアツの人々以外から見れば単なる空地に過ぎない。このような限られた範囲での文化形成に伴う空間を「cultural niche(文化的ニッチ)」という。 現在、用語として多用されているのが、無形文化遺産においてである。祭りや伝統芸能を行う場所として維持されてきた一帯を「文化的空間」と総称している。この場合、周辺の景観や空気感も含まれ、これを「Creative Atmosphere(創造的な雰囲気)」と呼んでいる。なお、景観に関しては世界遺産で文化的景観という文化遺産保護の考え方があり、文化的空間と相関する。 文化的空間には有機質な感覚を伴うが、現代社会においては一見無機質な工学・科学や現代美術といった領域からも構築できると捉えられている。例えば何の外観装飾もない近未来的建築物群の谷間に、前衛的な観念芸術作品を配した公共空間なども文化的空間と見做すこともできる。また、文化産業が稼働している空間や文化的なサービスが提供されている場所(図書館・博物館や茶室など)、風俗営業・賭博などを含む遊技場、インターネット上で情報が集積し閲覧できる空間、パワースポット、サブカルチャーにおける聖地なども文化的空間とされる。遊牧民の生活に伴うものや交通が形成するものであれば、移動する文化的空間(流動空間)も生じてくる。
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