植物成分スクリーニングプログラム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 21:51 UTC 版)
「パクリタキセル」の記事における「植物成分スクリーニングプログラム」の解説
1955年、米国国立がん研究所(NCI)は国立がん化学療養サービスセンター(Cancer Chemotherapy National Service Center、CCNSC)を設立し、外部機関や企業が提供した化合物の抗腫瘍活性の公共スクリーニングセンターとした。多くの化合物が合成品であったが、天然物由来品のスクリーニングも実施された。1960年7月、NCIは農務省の植物学者に1年辺り1,000種の植物サンプルを収集する様に命じた。1962年8月、ワシントン州パックウッド(英語版)の北方の森に生えていたタイヘイヨウイチイの樹皮が収集され、1964年5月に樹皮が細胞毒性を持つ事が明らかとなった。 1964年後半から1965年前半には、ノースカロライナ州のリサーチ・トライアングル・パークでイチイ樹皮の分析が実施され、活性物質が1966年9月に単離され、1967年に開かれたアメリカ化学会で報告された。1967年6月にこの有効成分はタキソールと命名された。1971年には、化学構造が決定され報告された。 NCIはより多くのイチイ樹皮を収集し、より多くのタキソールを入手した。1969年までに、約1,200kgの樹皮から28kgの粗抽出物が得られたが、タキソールは10gしか得られなかった。NCIは数年間はタキソールを一切使用しなかったが、1975年に異なるin vitro 系で抗腫瘍活性が再確認され、その2年後、タキソールを臨床開発の次の段階に進めることが決定された。精製したタキソール600gが必要とされ、1977年には3tを超す樹皮が消費された。 1978年に、NCIはタキソールが白血病マウスに対して穏やかな有効性を示す事を公表した。1978年11月には、異種移植研究についてのタキソールの有効性が示された。同時に、細胞生物学の分野ではタキソールは微小管の安定化を含む未知の機序で奏効することが1979年前半に報告された。製剤化上の課題と共に、この報告は研究者の興味を引き、NCIは1980年には9tのイチイ樹皮を収集する必要があると考えられた。動物を用いた毒性学的研究は1980年6月までに完了し、11月にはNCIはヒトへの投与に必要なIND(治験薬)登録を終えた。
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