植物によるビタミンB12の摂取
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 13:37 UTC 版)
「シアノコバラミン」の記事における「植物によるビタミンB12の摂取」の解説
ビタミンB12は、穀類、芋類、砂糖類、豆類、野菜類、果実にはほとんど含有されない。例外的に、野菜ではビタミンB12の水溶液をかいわれに吸収させた「マルチビタミンB12かいわれ」が開発され、6.8µg含んでいる。 また、ビタミンB12が不足しやすい菜食主義者に対して、海苔が摂取源として有効かどうかには議論がある。 文部科学省の発行する五訂増補日本食品標準成分表では海苔類はビタミンB12を含有するとされている。五訂増補日本食品標準成分表に掲載されている海苔のビタミンB12含有量は、近年の主流となってきた化学発光免疫測定法に基づく自動分析法ではなく、測定精度が低く、なおかつ熟練を要する微生物法により測定された値である。市販の複数の藻類のビタミンB12含有量を微生物法と化学発光法で測定した結果、スジアオノリやスサビノリ、クロレラが多量に含有するビタミンB12のほとんどが生理的に有効なビタミンB12であり、人間が対象ではないため参考データではあるが、ビタミンB12欠乏ラットを用いた実験ではこれらの海苔がビタミンB12供給源として有効であると報告されている。 一方で、2002年に複数の文献を検査した海外のベジタリアンのサイトの報告によれば、生海苔を乾燥させた乾燥海苔はビタミンB12の供給源になるという結論を持った論文に対して、そのデータに対してそうではないとの見解を示し、テンペ、生海苔、円石藻類のみがビタミンB12源として確実な摂取源であるかさらに研究されるべきであるとする報告もある。日本の研究者は、海外では藻類を食する文化がないため、適切でない乾燥方法を用いた藻類のビタミンB12が生理的に不活性になることがあるという報告があると指摘している。 1995年に、鈴木英鷹が行った調査では、厳格な玄米菜食の菜食歴4~10年の7~14歳の子供6名を対象とした研究において、1日あたり2~4gの海苔を摂取した場合、コントロール群とビタミンB12値などに有意差がないために、厳格な玄米菜食を行う子供でも海苔を食べることによってビタミンB12の欠乏を防ぐことができると報告している。この研究は血清ビタミンB12値とMCV(平均赤血球容積)だけの計測結果である。海外のベジタリアンのサイトの報告では、血清ビタミンB12値は、ビタミンB12欠乏症を悪化させる可能性のある有害なビタミンB12類似体もビタミンB12として計測されてしまうために、尿中メチルマロン酸を調査すべきで、海苔を食べることはビタミンB12の供給源であるという論文の結論に同意しないと主張し、その理由として統計上の有意差はないが改善もしていないためである。 同じ鈴木英鷹が2003年に生後より厳格な玄米菜食をしている小中高生の菜食者6名(男4名、女2名)を対象にした研究において、1日あたり海苔を0~2グラム摂取していた2名は、体内ビタミンB12の減少を示す尿中メチルマロン酸の上昇を示したものの、1日あたり海苔を4グラム以上摂取していた4名は尿中メチルマロン酸の上昇を示さなかったことから、海苔を毎日4グラム以上摂取することで、ビタミンB12の供給源になることが示唆された。
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