植物による吸水
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 21:33 UTC 版)
植物による水と栄養の吸収も、土壌中の水の貯留と移動にとって同じように重要である。凝集力張力理論 (cohesion-tension theory) によれば、多くの土壌水は、水の蒸散する力が植物の根から葉までの木部樹液の水分通導に伝わって生じる吸収力によって植物に取り入れられる。水の上昇移動と溶液の再分配(水圧リフト hydraulic lift)は根の内皮、気孔の伝導力による植物の葉 で制御され、根と茎の導管のキャビテーション(泡の発生)に阻害されることがあり、エンボリズム (xylem embolism) とも言われる。さらに、植物の根の高塩分濃度は土壌水から植物の根に向かっての浸透圧勾配を生じる。浸透圧による吸水は夜のような低温時と湿度が高いために蒸散が少ない時には重要になり、高温と低湿度時はその逆である。それぞれ溢液現象 (en) と、しおれの原因となる。 根の伸長は植物の生存にとって不可欠である。冬のライ麦を4ヶ月間、1立方フィート(0.0283 立方メートル)のローム土で育てた実験によれば、その植物は 13,800,000 本の根を伸ばし、長さは合計 620 km、表面積は 237 平方メートルとなった。また、毛根の長さは合計 10,620 km、面積は 400 平方メートル、表面積は 638 平方メートルであった。そしてローム土の総表面積は 52,000 平方メートルと推定された。すなわち、根は土壌の 1.2% としか接触していなかったことになる。しかし、根の伸長は、毎日新しい根が新しい土壌の体積を探し出し、ある期間に土壌中の探し出された体積は大きく増加し、その期間に根から吸収される水の体積も増加する、という動的な過程としてとらえるべきである。根の構造、すなわち空間的な根の配置は、植物の水と栄養の可用性に対する順応と、その結果としての植物の生産性にとって、重要な役割を果たしている。 不飽和水分移動は1日に 2.5 cm 以下であるため、根は水を探す必要がある。その結果、根は常に死滅と成長をしながら、土壌水分量が多いところを探し続ける。植物がしおれを引き起こすほどに土壌水分が不足すると、植物は恒久的な被害を受け、作物の収穫量は低下する。モロコシが種子の芽生え期間と結実段階に 1300 kPa の低サクションにさらされた時には、生産量が 34% 低下した。
※この「植物による吸水」の解説は、「土壌」の解説の一部です。
「植物による吸水」を含む「土壌」の記事については、「土壌」の概要を参照ください。
- 植物による吸水のページへのリンク