最後の数時間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 06:17 UTC 版)
「メアリー・ジェーン・ケリー」の記事における「最後の数時間」の解説
バーネットがケリーの元を最後に訪れたのは11月8日の午後7時から午後8時のことだった。ケリーは友人のマリア・ハーヴェイ (英: Maria Harvey) と一緒にいた。ハーヴェイとバーネットは同程度の時刻にケリーの元を去った。バーネットは自分のロッジングハウスに戻り、午前0時30分頃に就寝するまで他の住人とカード遊びをしていた。 ミラーズ・コートの住人で売春婦であり、「未亡人で運が悪い」と自称するメアリー・アン・コックス (英: Mary Ann Cox) は、午後11時45分頃に酔っ払ったケリーが男と一緒に自宅に戻ってきたのを目撃したと報告している。その男は太っていて、髪は生姜色で、山高帽を被っており、ビールの缶を持っていたという。コックスとケリーは互いにおやすみの挨拶を交わした。ケリーはその男と一緒に部屋に入り、それから"A Violet I Plucked from Mother's Grave When a Boy"という歌を歌い始めた。コックスが午前0時に外出し、1時間後に戻ってきたときも、ケリーはまだ歌を歌っていた。ケリーの上の部屋に住むエリザベス・プラター (英: Elizabeth Prater) が午前1時30分に就寝したとき、歌はやんでいた。 ケリーと知り合いだった労働者のジョージ・ハチンソン (英: George Hutchinson) は、午前2時頃にケリーと会い、ケリーが6ペンス貸してくれないか頼んできたと報告した。ハチンソンは持ち合わせがなく、ケリーが立ち去ると、ユダヤ人の格好をした男がケリーの方に近付いてきたという。後に、ハチンソンは警察に対してその男について極めて詳細に説明し、真夜中のことだったにもかかわらずまつげの色まで説明した。ハチンソンは、ミラーズ・コートの向かいの通りで2人が会話していたのを立ち聞きしたと報告した。ケリーはハンカチを無くしたことについて不平を言い、男は自分の赤いハンカチを与えたという。ハチンソンは、ケリーと男はケリーの部屋へ向かっていったと主張した。ハチンソンは2人の後をつけ、それから2人の姿を見ることは二度となかったという。ハチンソンは腕時計が午前2時45分頃をさしていたときに切り上げたという。ハチンソンの証言は、洗濯女のセアラ・ルイス (英: Sarah Lewis) の証言により部分的に補強されていたようだ。ルイスは、友人のケイラー (英: Keyler) 一家と夜を過ごそうとしていた道すがら、午前2時30分頃にミラーズ・コートを通り過ぎ、そのときにミラーズ・コートの入り口を見ていた男を目撃したと報告した。ハチンソンは、ケリーは件の男と知り合いだったようではあるものの、その人物が疑わしいと主張していた。ハチンソンによると、その人物の富裕そうな外見は近隣では非常に珍しいものだったという。しかし、ハチンソンの話はケリーについての検死審問が慌しく終結した後に警察に伝えられた。捜査を担当したフレデリック・アバーライン (英: Frederick Abberline) はハチンソンの情報は重要であると考え、件の男を発見できるように警察と一緒にハチンソンを送り出した。現存する警察の記録には、ハチンソンの名前が再び出てくることはない。そのため、ハチンソンの証言が最後には退けられたのか、反証が見つかったのか、それとも確証が得られたのかははっきりしない。ウォルター・デュー(英語版) (英: Walter Dew) は自身の回顧録でハチンソンの証言は信憑性が低いと記していた。デューによれば、ハチンソンが男を目撃したのは実際はケリーが殺害された日とは別の日だったという。犯罪捜査局 (CID) の刑事部長のロバート・アンダーソン(英語版) (英: Robert Anderson) は後に、殺人者をよく見ていた唯一の目撃者はユダヤ人だったと主張した。ハチンソンはユダヤ人ではないため、アンダーソンの言う目撃者ではないということになる。現代の学者の一部はハチンソンこそが切り裂きジャックであるという説を提唱している。ハチンソンは偽証により警察を混乱させようとしていたというのである。しかし、ハチンソンは報道機関に自分の話を売るために目撃談を創作しただけの目立ちたがり屋だったという説を唱える学者もいる。 コックスは午前3時頃に再び家に戻った。ケリーの部屋からは何の音も聞こえず、光も見えなかったという。エリザベス・プラターは子猫が自分の首の上を歩いてきたために目を覚ましていた。プラターとセアラ・ルイスの両名は、午前4時頃に"Murder!" (日: 人殺し!) という叫び声がかすかに聞こえてきたと報告している。しかし、2人は特に反応しなかった。2人によれば、イーストエンドでそのような叫び声を聞くのはよくあることだったという。コックスは眠らずにいると、夜通しミラーズ・コートを人々が出入りする音を聞いたと主張した。コックスは午前5時45分頃に誰かが住居から出て行く音を聞いたという。プラターは午前5時30分に家を出て、テン・ベルズ(英語版)というパブにラム酒を飲みに行った。そのときに怪しいものは見かけなかったという。
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