更新に向けた設計検討
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/25 03:32 UTC 版)
「富士川橋梁 (東海道本線)」の記事における「更新に向けた設計検討」の解説
下り線のトラス桁を更新するにあたり、橋台や橋脚を流用して上部構造のみを交換する案もあったが、比較検討の上、別に下部構造と上部構造を新たに建設する方法が採用されることになった。流用するためには、上下線の中心間隔が狭くて上下線の間で新桁を組み立てる余裕がほとんどなかったこと、列車本数の多い区間であり列車の間合いの作業が困難であったこと、元の下り線の橋脚は明治末期のもので当面の使用の問題はなかったものの長期の使用には不適切であるとともに、第8橋脚が洗掘により上流側に傾斜していたこと、新桁を据える前に相当の橋脚補修工事が必要であったこと、といった問題があったためである。工事費の比較の上ではそれでも、再利用する方が安いとされたものの、作業の安全性や将来の保守作業の軽減を考慮して、新線案が採用されることになった。 新しい橋を建設するにあたり、トラス橋の斜材や垂直材で視界を遮られずに富士山の眺望を確保することが大きな目標とされた。新しい橋梁は従来の上り線の約13メートル上流側に並行して架設されることになり、また径間構成も揃えられることになった。この結果橋梁形式の検討案として、支間62.4メートルの曲弦単純下路トラス案、支間62.4メートルの平行弦単純下路トラス案、支間62.4メートルの下路ランガー案、支間63.5メートルの3径間連続中路プレートガーダー案の4案が比較された。 単純トラスを使う2案は鋼重量も軽く設計でき、こうした条件においてはもっとも一般的な形式であり、隣接する従来の上り線が曲弦トラスであったので、曲弦トラス案はそれに揃えて調和を保つことができるとされたが、一方製作や架設の容易さという点では平行弦トラス案の方が有利であった。ランガー案は鋼重量がトラス案より大きくなるが、より優美な形態であるとされた。プレートガーダーは単純桁では鋼重量が大きくなって不利であったことから、3径間連続桁を検討した。平行弦トラス案と3径間連続プレートガーダーを比較したところ、平行弦トラス3径間分で重量531トンがプレートガーダーは重量657トンとなった。この結果、製作費はトラスの方が安いと見積もられたが、プレートガーダーの方が架設が容易で塗装面積も少なくて済み、総体としてはあまり費用が変わらず、また開通後の保守作業はプレートガーダーの方が有利でしかも眺望に優れるとされたことから、プレートガーダー案が採用されることになった。 富士川橋梁では、レール面高さが高くなると前後のアプローチの問題が出るため、レール面高さが高くなる上路プレートガーダーには難点があった。一方で車窓からの眺望を確保するためには、桁の上フランジを車窓より低い位置とすることが望ましく、結果的に中路プレートガーダーが採用されることになった。中路プレートガーダーは、下路プレートガーダーとほぼ同じ構造で、軌匡を支える横桁を主桁のほぼ中央の高さに設けたものである。一般的には下路プレートガーダーとして設計すれば十分機能を果たすため、わざわざ中路プレートガーダーを採用しなければならない条件はあまりなかった。設計された3径間連続桁の諸元は、全長191.40メートル、支間は63.50メートル×3、主桁中心間隔4.80メートル、桁高3.90メートルで、これを3連架けて全長は574.90メートルとした。富士川橋梁以前のプレートガーダーの最大支間長は、総武本線秋葉原 - 浅草橋間に1932年(昭和7年)に架設された昭和橋架道橋の45.3メートルで、富士川橋梁はこれを大きく上回ることになった。設計活荷重はKS-18である。ウェブの座屈防止のための水平補剛材を追加したことにより、最終的に重量は第1連が701.953トン、第2連が702.028トン、第3連が701.864トンとなった。下流側の上フランジの外側に幅0.4メートルの橋側歩道を設置して、列車見張り員の見通し確保と作業員の列車退避に役立てる構造とした。また作業員が列車接近を容易に視認できるように、橋梁中央部を最高点として、東京側に6パーミル、神戸側に10パーミルの勾配を設けた。
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