曲線通過性能との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 21:40 UTC 版)
曲線を円滑に曲がる性能と蛇行動に対する安定性の実現は相反することが知られている。そのため、実際の車両は、蛇行動を抑えるだけでなく、曲線通過性能とのバランスを考慮して諸元が決められる必要がある。 幾何学的蛇行動と同じく車輪単体がレールに対して滑らずに旋回する場合を考えると、輪軸の軌道中心からのずれは以下の式で表される。 y = r b R λ {\displaystyle y={\frac {rb}{R\lambda }}} … (17) ここで、 y {\displaystyle y} :輪軸の中立位置からの左右変位、 R {\displaystyle R} :曲線の曲率半径である。蛇行動の解析と同様に、実際の輪軸は台車に支持され、慣性は無視できず車輪・レール間にはすべりが発生するので、実際の変位量とは異なるが、曲線通過性能の基本的特性を理解するのに重要である。 (17)式によると「大きな車輪半径」「広い軌間」「小さな踏面勾配」「小さな曲線半径」ほど、輪軸の左右変位 y {\displaystyle y} が大きくなる。しかし車輪の幅は有限なので、当然ながら y {\displaystyle y} が大きくなれば車輪がレールから外れて脱線してしまう。このような脱線を防ぐため、車輪にはフランジと呼ばれるつばが線路の内側ついている。普段の走行ではフランジ遊間と呼ばれる輪軸中立位置でのフランジとレールの隙間以内で走行するが、フランジ遊間を超えてレールに対して車輪が大きく左右変位したときはフランジがレールに接触して車輪を案内する構造となっている。しかし、フランジが接触しながらの走行は、振動・乗り心地の悪化やフランジ・レールの摩耗による交換メンテナンス負荷増大などを招くため望ましくない。また、フランジ接触を起こすような急曲線では、スラックと呼ばれる曲線の円滑通過のための軌間の拡大が行われるが、広げ過ぎると危険となるので大きくは取れない。 以上のような理由から、曲線通過時にフランジ接触を起こさずに円滑な通過を実現するためには、輪軸左右変位 y {\displaystyle y} を小さくしてフランジ遊間以下とするのが望ましい。(17)式によると y {\displaystyle y} を小さくするには「小さな車輪半径」「狭い軌間」「大きな踏面勾配」が望ましいが、(8)式からわかるように、このような条件は同時に蛇行動を増長させる。このように曲線通過性能と蛇行動安定性に対する要求は相反する。実際の車両では、蛇行動の解析と同様に弾性支持や粘性減衰・摺動摩擦による抵抗などの影響もある。車両諸元における相反性をまとめると以下のようになる。 蛇行動安定性と曲線通過性能において相反する特性車両諸元蛇行動安定に有利な特性曲線通過に有利な特性台車回転抵抗大 小 軸箱支持剛性ある程度大 小 踏面等価勾配小 大 軸距大 小
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