旧民法家族法の特徴
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政府が公布した旧民法もまた妥協の法典であり、新し過ぎるという批判と、古過ぎるという批判に値した。 明治23年法律第98号の特徴は、 全ての人に権利能力を認める(イタリア旧民法に倣ったもの)仏民法典はフランス人権宣言(1条)における万人の法の下の平等を否定しており、1848年のデクレ(政令)で禁止されるまで植民地での外国人に対する奴隷制を許容していたフランス民法8条は、今なお法文上は現行法である。フランス人権宣言(人間と市民の権利の宣言)もまた「人(homme)」と「市民(citozen)」を区別しており、平等主義は不徹底であった。 既存の家族経営維持のために長男子相続制が確立 廃戸主制が無くなり、戸主に集中された財産は、家の制約を脱し個人財産としての性格が確立一方で家族にも財産権を認め(人245条)、戸主の債権者が家族のほぼ全財産を差し押さえできる従前の維新法を変革。 戸主の家族員に対する権利義務の強化 成年の子に対しても父母の同意権を規定 妻と異なり、夫の姦淫による法定離婚は著しく悪質なものに限定 戸籍法が民法に不可欠のものとされた。 陸羯南の『日本』は、この家族法に関する限り、「世人の噂せしが如き種々の新奇なる分子は大抵取り除かれたるが如し」と好意的に評価(10月9日)。 穂積陳重も、同時期の大学の講義で相続法や財産法の形式を批判しつつも、人事編は過渡期の立法としては概ね妥当と評価している。 仏民法8条 総てのフランス人は私権を享有すべし 旧民法人事編1条 凡そ人は私権を享有し法律に定めたる無能力者に非ざる限りは自ら其私権を行使することを得 私権の中区別を立て外国人に其一分を拒絶する…説は古昔外国人を目して野蛮と為し之を法律の保護外に放置したる陋習と殆ど兄弟たるものにして事理を混同するの太甚(はなはだ)しきものなり。 — 熊野敏三、1890年(明治23年) 人38条 1.子は父母の承諾を得るに非ざれば婚姻を為すことを得ず 父母を尊敬すべき義務及び家制の結果は子の年齢如何に依り変更するものにも非ず…父母其権力を濫用して婚姻を拒絶するが如きは稀有の事実なるべし。 — 熊野
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