新系列気動車の展開とその技術応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 18:51 UTC 版)
「国鉄キハ90系気動車」の記事における「新系列気動車の展開とその技術応用」の解説
キハ91形で試用されたDML30形機関は制式化され、その後のキハ181系などの特急形・急行形・普通形気動車に採用された。 中でもキハ65形は本系列直系の量産車というべき存在であり、在来型急行形気動車との混用を可能とするため、最高速度は低くなり、制動装置も従来の気動車とほぼ同じものに変更され、運転台周りの仕様が継承されず、また全車に強力な大形発電セットが搭載された関係で、自重増大を嫌って安価だが重い自然通風式放熱器も採用されなかったが、これら以外の基本設計の大半はキハ91形量産試作車のそれに依拠している。この系統はその後、汎用気動車としてのキハ66系へ発展し、更に大幅な性能引き下げの上で一般形気動車のキハ40系を派生してゆくこととなる。 これに対し、特急形のキハ181系は固定編成による限定運用で、在来型システムとの混用を考慮せずに済んだがゆえにキハ90系の制御システムを素直に継承し、重い発電セットを先頭車に集約搭載することで中間車に安価な自然通風式放熱器を採用した。急行形として汎用性が求められたキハ65形の構成とは対照的であり、結果的にキハ90系の要素技術は特急形と急行形で異なる2つの流れを形成したことになる。 もっとも、キハ65形に量産で先行したキハ181系は夏場の特定条件下で冷却系のトラブルを頻発しており、また、その流れに連なるキハ183系0番台では寒冷な気候の北海道で使用されることから、着雪によるトラブル発生の危険性があって自然通風式放熱器を継承せず、こちらは冷却系に起因するエンジントラブルを出さなかったこと、それに強制冷却機構を標準搭載したキハ65形がその量産開始から現在に至るまで、冷却系に起因するエンジントラブルをほとんど引き起こしていないことから、結果的にこの自然通風式放熱器はシステムとして完全な失敗作であったとみなされている。これには旧弊な副燃焼室式を無批判に採用したDML30系機関の燃焼効率が当初想定された以上に悪く高発熱となり、またキハ60形での直結多段液体式変速機の技術開発の失敗から効率の悪い変速段を多用する設計となったため、それらのしわ寄せが放熱器に集中してしまったという一面もあり、大出力ディーゼル機関を搭載する鉄道車両開発の難しさを物語っている。 なお、本系列では不採用となったキハ90形のDMF15形については、12系客車以降の床下発電セット用機関として制式採用され、その後キハ40系などにデチューンの上で転用されている。 本系列自体は製造後わずか10年で運行終了となったが、そこで試用された様々な要素技術はさまざまな欠陥や問題を内包しつつ、以後の国鉄気動車・客車に大きな影響を及ぼしており、国鉄気動車史上、重要な系列ということができる。
※この「新系列気動車の展開とその技術応用」の解説は、「国鉄キハ90系気動車」の解説の一部です。
「新系列気動車の展開とその技術応用」を含む「国鉄キハ90系気動車」の記事については、「国鉄キハ90系気動車」の概要を参照ください。
- 新系列気動車の展開とその技術応用のページへのリンク