措置診察
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 07:06 UTC 版)
指定医2名以上の診察の結果が「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認める」ことで一致すること(29条2項) 措置入院にあたっては、都道府県知事は2名以上の精神保健指定医を指名して診察させる。通常は2名のみである。この指定医による診察を「措置診察」とか「措置鑑定」と呼ぶことが多い。緊急措置入院に引き続き行うときは「再診察」「再鑑定」と言うこともある。指定医2名は同時に診察してもよいし順次診察してもよい(順次診察の場合は一人目の診察が「一次診察」、二人目が「二次診察」と呼ばれる)。 指定医の属性に制限はなく、要措置となれば入院する予定の病院に所属する者や、本人の主治医であった者でも制度上は構わないことになる。ただし上記ガイドラインは、「措置診察を行う2名の指定医については、同一の医療機関に所属する者を選定しないことを原則とするべき」「指定医の所属先の病院に被通報者を措置入院させることについては、避けるように配慮すべき」としている。 精神保健指定医は28条の2の基準に則り、「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認める」(このような状態を呈することを「措置症状」と呼ぶことがある)かどうかを各自判定し、各指定医が一致してこれを肯定することが必要である。 なお、指定医が措置診察した内容は、通常、「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成12年3月30日障精第22号厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)の様式21として規定される「措置入院に関する診断書」(薄赤色のA3用紙であることから「赤紙」と称されることがある)に記載するよう求められる。このような措置診察に関する診断書作成に法律レベルの根拠はなく(上記通知は様式を定めるのみでこれを作成する根拠規範とはならない)、条例で根拠付けられる(例えば、北海道の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行細則」4条2項及び同条項において引用する別記第4号様式)。また措置診察の法的性質は鑑定であって医師法上の診療ではないから、診療録記載義務(医師法24条1項)も生じない(精神保健福祉法19条の4の2の対象たる19条の4第1項は29条1項を除外している)。 診察の場所について法令上の定めはなく、自治体が専用の鑑定室を設けている場合、要措置となれば入院する予定の病院を間借りして行う場合等さまざまである。本人の居所に立ち入ることもできる(27条4項)。また、通報を受けてから措置診察実施までの時間、措置診察にかける時間、措置診察後に措置入院を決定し告知するまでの時間についても、法令上の定めはない。 これについて、例えば23条通報(警察官からの通報)を受けて措置診察を行う場合に、通常は通報前に警察官職務執行法3条1項の保護が先行していることから、同条3項の期間内に診察・入院措置を行うことで、比較的速やか、かつ事実上警察官の勢力下で安全を確保する運用がある。 また、かつてある地方公共団体が、通報を受けてから措置診察まで数週に亘り医療保護入院させる(その経過を元に措置診察を行う)という運用をしていたが、これは措置入院制度の趣旨に合致しないと批判され、改められた。 都道府県の職員の立会い(27条3項) この立会職員に、各指定医の診察結果を得て(覊束的に)入院を決定し入院の告知等を行う権限等が授権されていることが多い。 入院の告知(29条3項) 告知の書面は、「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成12年3月30日障精第22号厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)の様式7を利用したものが使用されることが殆どである。
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