悪魔はどこまで介在したのか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 06:59 UTC 版)
「悪魔を憐れむ歌」の記事における「悪魔はどこまで介在したのか」の解説
前述の通り、「悪魔を憐れむ歌」は小説「巨匠とマルガリータ」から着想を得ている。当時の恋人であったマリアンヌ・フェイスフルが薦め、ミックはこの小説を読んでいる。共通点は冒頭の部分だけではなく、小説に登場する悪魔ヴォランドが、総督ピラトがイエス・キリストを審問する様を実際に見たかのように語る部分も似通っている。 しかし、両者では悪魔の役割が異なる。ヴォランドは、スターリン時代のソビエト連邦とキリスト処刑時代の間で、悪魔の一団を率いてモスクワを舞台に様々な事件を引き起こす黒幕として暗躍する。それに対し、「悪魔を憐れむ歌」の悪魔が事件にどの程度関わったのかは明瞭ではなく、多くの解釈がある。日本語訳詞では悪魔が深く関与している事になっており、ニコライ2世を殺害しアナスタシアが空しい懇願をした相手もこの悪魔とされている。また、悪魔が総督ピラトに手を洗わせた行為が、「手を洗う」が英語の慣用表現で「厄介事から離れる」(日本語の慣用句「足を洗う」に近い)事を意味する点から、イエスへの同情と罰を求める世論との間で板ばさみになった総督に処刑の決断を促したと解釈し、悪魔の干渉が大きいという意見もある。 一方で、悪魔は事件の脇役もしくは只の傍観者 だとする解釈もある。『ベガーズ・バンケット』録音直前の1968年3月に、ミックはベトナム戦争反対デモに参加し、5月にはフランスで五月革命が起こった。「悪魔を憐れむ歌」はアナログ盤A面1曲目に収録されているが、これはB面1曲目の政治色が濃い「ストリート・ファイティング・マン」と対を成しており、「巨匠とマルガリータ」のテーマでもある人間の愚行と反体制的思想をそれぞれ現代的なポップ・ミュージックに転換したという意見である。変革が行われる度に繰り返される流血は人類自らが招くもので、曲は、悪魔ルシファーが人間の心の闇に囁きかけ、起こった事件を眺めながら嘲笑し、面白がってかきまわす 様を描写することで風刺していると読み取っている。 ローリングストーン誌のインタビューで「悪魔を憐れむ歌」について語ったミックは、この登場人物は善悪を両方とも含んだ歴史の長さを象徴していると答え、歌詞はそのすさまじく長い軌跡の中のほんの一部を表現したとのみ話している。
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