急性骨髄性白血病の治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 02:02 UTC 版)
現在の急性白血病の基本の治療法は total cell kill(TCL)といい、最初に抗がん剤を使用して膨大な白血病細胞を減らして骨髄に正常な造血細胞が増殖できるスペースを与え(初回寛解導入療法)、その後の休薬期間に空いた骨髄で正常な造血細胞が増えるのを待ってから、さらに間歇的に抗がん剤を使用すること(地固めおよび強化療法・維持療法)を繰り返して最終的に白血病細胞の根絶を目指す治療を基本とする。 急性骨髄性白血病では最初の治療(寛解導入療法)として アントラサイクリン系抗がん剤(ダウノルビシンあるいはイダルビシン)3日間あるいは5日間と抗がん剤シタラビン(キロサイド)7日間の併用療法が一般的である(急性前骨髄球性白血病(AML-M3)は例外である。AML-M3については後述)。これでほとんどの患者では寛解にもっていける。しかし、血液学的に白血病細胞が見られなくなっても白血病の大本である白血病幹細胞は隠れて存在し、そのままでは白血病が再発するため、寛解導入療法後に一定期間が経ち正常な造血が回復してきたら、隠れた白血病幹細胞の根絶を目指す地固め療法を行う。地固め療法ではアントラサイクリン、シタラビンに加え、白血病細胞が薬剤耐性を持たないように違う種類の抗がん剤(エトポシドやビンカアルカロイド)を加えた併用化学療法を使ったり、シタラビンの大量療法を行い、通常は1クール4週間程度の地固め療法を3、4回繰り返し白血病細胞の根絶を目指す。強化療法で白血病細胞の根絶ができたと期待できても、万が一生き残っている白血病細胞があると再発する可能性があるため、強化療法終了後(退院後)にも定期的に抗がん剤投与を行い、万が一の可能性を押える維持療法を行うこともある。ただし、日本では強化療法を十分に行うことにより維持療法は不要とする施設も多い。完全寛解の状態が5年続けば再発の可能性は低く、治癒と見なしてよいとされている。 急性白血病では、急性前骨髄球性白血病(AML-M3)のみ治療法はまったく異なり、オールトランスレチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法と抗がん剤の併用療法が用いられる。オールトランスレチノイン酸を与えると、分化障害を持っていた急性前骨髄球性白血病細胞はATRAによって強制的に分化・誘導させられ、継続的に白血病を維持する能力を失ってしまうのである。この薬剤の登場により、M3はAMLの中でもっとも予後良好な群となった。ATRA単剤では再発が多いため、ATRAと抗がん剤アントラサイクリンを併用した寛解導入・地固め・強化維持療法が行われ多くの患者が治癒している。ATRA治療後に急性前骨髄球性白血病(AML-M3)が再発してしまった場合には、機序は違うが、やはり細胞を分化誘導とアポトーシスに招く亜ヒ酸が著効することが知られている。
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急性骨髄性白血病の治療
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「急性白血病」の記事における「急性骨髄性白血病の治療」の解説
治療方針はAPLかAPL以外のAMLかで大きく異なる。年齢50歳以下、パフォーマンスステータスが0~2、inv(16),t(8:21),t(15:17),de novo AMLは予後良好群であり、46XY,-Yは予後中間群、複合型染色体異常は予後不良群である。未治療急性白血病の第一選択は化学療法であるが予後不良群は化学療法での治癒は期待できず、造血幹細胞移植や骨髄移植が検討される。これらの治療は適応が狭く、一般には50歳以下でHLAの一致したドナーがいる場合に適応があると言われている。近年は分子標的薬、抗CD33抗体であるゲムツズマブなどを用いることもある。化学療法では寛解導入療法と寛解後療法に分かれる。寛解導入療法は完全寛解(CR)を導くための治療法である。完全寛解とは体内の白血病細胞が10の10乗個未満(発症時は12乗個以上ある)となることで骨髄、末梢血中の白血病細胞がほとんど消失し、正常の造血能が回復した状態のことをいう。白血病細胞が完全に消失したわけではないのでこのままでは再発が必発であるので、寛解後療法を行う。寛解後療法には寛解導入直後に行う地固め療法と間欠的に強力に行う維持療法がある。 non APL IDR(イダルビシン)とAra-C(シタラビン)が寛解導入療法では標準的である。 APL 寛解導入療法としてはATRAによる分化誘導療法が用いられる。オールトランスレチノイン酸とDNR(アントラサイクリン)の併用、寛解後はDNR単独療法、維持療法としてはATRAと他の抗がん剤の併用が行われる場合が多い。APLでは播種性血管内凝固症候群を起こしやすく、レチノイン酸症候群という治療中の合併症もある。肺水腫のような病態になるのでその場合はステロイドパルスを行う。
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