幻のファースト・アルバム『絆』
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「ダンスリールネサンス合奏団」の記事における「幻のファースト・アルバム『絆』」の解説
小西昌幸は、北島町役場(徳島県板野郡)公式サイト内の「文化ジャーナル」2002年(平成14年)3月号において、同年2月24日に北島町の創生ホールで開催された「ダンスリー・ルネサンス合奏団 結成30周年記念コンサート 中世ルネサンス音楽の源流と支流」を紹介するとともに、「ダンスリー 幻のアルバムをめぐって」として、1977年にURCレコードからリリースされた「幻のファースト・アルバム」と呼ばれる2枚組LP『絆 Musique Medievale Et De La Renaissance』について詳細に記述している。 URCレコードは1969年に秦政明が設立した大阪の零細レコード会社で(自主制作レコードではない)、URCは "Undetground Record Club" の略称。高石友也が1967年に設立した高石事務所の子会社として発足し、1970年代、はっぴいえんどのファースト・アルバムをはじめ、岡林信康、三上寛、遠藤賢司、高田渡、友部正人、加川良など、日本のフォーク・ロックのアルバムをリリースしていた。 プロテストソング色の濃い関西フォーク中心のURCレコードで、古楽アンサンブルであるダンスリーは異色な存在だったが、同社からレコードを出していた五つの赤い風船のメンバーの紹介によりアルバムが発売されることになった。岡本一郎は「大阪つながり」で話があったと述べている。 『絆』は、URCレコード内の直販専門レーベル「UDCレーベル」最後のアルバムとしてリリースされ、UDC-5001 - 2の製品番号が付されている。別にUDCレーベルを立ち上げた理由は、高石事務所に所属していたザ・フォーク・クルセダーズの『イムジン河』がレコ倫に抵触して発売自粛を余儀なくされ(詳細はイムジン河#ザ・フォーク・クルセダーズ版「イムジン河」を参照)、そのため直販専門レーベルを新設したという。 URCレコードは1977年に秦政明が音楽制作から撤退して活動停止(倒産ではない)、その後は原盤権を得た会社が次々倒産するなどして権利が転々とした。岡本一郎すらどこにあるかわからず探していたという状態だったが、1992年に音楽出版会社のシンコー・ミュージックが原盤権を取得、東芝EMIが販売権を得て、1995年からフォークの旧譜が東芝EMIよりCD再発されたが、ダンスリー『絆』の再発はなかった。 小西昌幸が知人のサエキけんぞうを通じて、シンコー・ミュージックに問い合わせたところ、同社に『絆』のマスターテープが現存することが判明したが、同社と東芝EMIの両社ともCD再発は考えていないと回答したという。なお、小西からの問い合わせに対し、シンコー・ミュージックの原盤管理担当者から「ダンスリーとはどういうグループなのか?」と聞かれたので少し説明した、と小西は記事中で述べている。 小西は「文化ジャーナル」の記事中で、日本国内で古楽名盤の再発が進まない現状を手厳しく批判しているが、その背景には日本の音楽産業におけるレコード会社と音楽出版会社と、JASRACなどの著作権管理団体などが絡み合う権利関係の複雑さが原因で、アーティスト自身が自分の制作した楽曲を自由に使用できず、売れないという理由で廃盤にされたら自身で再発することも困難になるという大きな問題がある。 小西がその記事を書いた直後の2002年4月、URC音源の販売権が東芝EMIからエイベックス・グループのプライム・ディレクションに移り、エイベックス・イオレーベルからザ・フォーク・クルセダーズなどの音源がCD化されたが、その際もダンスリーのCD再発の話はなかった。 その後さらに音源の販売権がポニーキャニオンに移り、2019年12月26日にはURCレコード設立50周年を記念して特設サイト「URC50周年プロジェクト」を設置、音源の再発を行ったがダンスリーの再発はなく、それどころかシンコー・ミュージックのURC公式サイトには、ダンスリーの『絆』は掲載されていない。 なお『絆』以外にも、ダンスリーのアルバムでCD再発され新品で手に入るのは、坂本龍一とのコラボレーションアルバム2枚だけという状態であり(2020年3月現在)、小西昌幸が2002年に「今、メジャーとよばれるレコード会社は、万単位の売れ行きを示すものでないと全く食指を動かそうとしない」と批判した問題は、2020年代に入っても解決していないと言える。
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