左ハンドルと右ハンドル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 06:19 UTC 版)
自動車のハンドル位置は通常、左側通行の国ではホイールローダーなどの建設機械を除いて右ハンドル車(運転席は進行方向右側)、右側通行の国では左ハンドル車(運転席は進行方向左側)が使用される。 すなわち運転席の位置はそれぞれ道路の内側となる。これは車両すれ違い時の安全性や右左折時・追い越し時などの視界、対向車の確認のしやすさなどを考慮した結果であり、デファクトスタンダードともなっている。逆位置の自動車の登録や走行を認めないという法的規制がある国も多い。そのため外国に自動車を輸出する自動車メーカーは、同一車種について左右ハンドル両方の仕様を設計・製造することが一般的である。輸入中古車に対し車両改造業者でハンドル位置変更の改造が行われることもある(右写真参照)。 しかし例外的に左側通行の日本では、主に消費者の嗜好から輸入車の一部が左ハンドルのままで販売されているほか、オールテレーンクレーンやホイールローダーなどの建設機械では、左折時の巻き込み事故や幅寄せ時の接触事故防止の観点から例外的に左ハンドルを採用している。また、左側通行時代のスウェーデンでは左ハンドル車が主流であった。 右側通行の地域でも、左側通行の国から中古車を輸入したため右ハンドル車が多数存在するという例もある。例えば右側通行のロシア(特にウラル山脈から東の沿海地方や極東・ハバロフスク地方など)では日本から中古車を多数輸入しており、現地で右ハンドルのまま使用されている。また一部アジア諸国でも同様の現象があり、モンゴル、ミャンマー、北朝鮮、アフガニスタンといった国々がそれに該当する。ミャンマーでは、隣国のタイ(左側通行)から輸入した右ハンドルの中古車も多く見られ、走行する車の大部分は右ハンドル車である。なおアメリカ領ヴァージン諸島は左側通行であるが、大半の自動車はアメリカ本国仕様に準じた左ハンドル車である。 右側通行の地域の郵便配達車両で、あえて右ハンドル車を採用している所も存在する。この場合右ハンドル車であれば運転手は車両から降りずに、もしくは反対側に回り込まずに郵便物を道路沿いの郵便ポストに投函できるという理由によるもの。 左側通行であるオーストラリアのごみ収集車ではデュアル・コントロール(DUAL CONTROL)と呼ばれる両側運転台付きのトラックも存在しており、ごみ回収時はドライバーは左側に乗車し、歩道側に置かれているごみ箱を車内から自動サイドローダー(専用アーム)を操作して回収する。 右側通行の国の車でも「右ハンドルのみ」という場合が存在する。初期の自動車の多くは通行方式の左右に関係なく右ハンドルだった。これは当時の車は操作レバーがボディ横から伸びており、それを操作するのに都合がよいためである。右側通行の国で左ハンドル車が一般化するのはフォード・モデルTが登場する1908年からとなる。なおそれ以降も保守的な高級車は右ハンドルを堅持し続けていた。近年でも、イタリアのフェラーリ・250LM 、西ドイツ(当時)のポルシェ・935・モビーディック、アメリカのフォード・GT40は右ハンドルのみである。それらの車はル・マン24時間レースでの競技走行を念頭に置いて設計されており、レースのコースが時計回りであるため、右ハンドルの方が視界の上で有利となるからである。
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