川田順造とは? わかりやすく解説

川田順造

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/02 02:28 UTC 版)

かわだ じゅんぞう
川田 順造
文化勲章受章に際して
公表された肖像写真(2021年)
生誕 (1934-06-20) 1934年6月20日
日本東京府東京市深川区
死没 (2024-12-20) 2024年12月20日(90歳没)
日本
居住 日本
フランス
オートボルタ
国籍 日本
研究分野 人類学
研究機関 埼玉大学
東京外国語大学
広島市立大学
神奈川大学
出身校 東京大学教養学部卒業
東京大学大学院修了
主な業績 非文字コミュニケーションの研究
口頭伝承論を創始
文化の三角測量を提唱
主な受賞歴 日本エッセイスト・クラブ賞
(1974年)
藤村記念歴程賞
(1988年)
フランス語圏大賞
(1991年)
毎日出版文化賞
(1992年)
プロジェクト:人物伝
テンプレートを表示

川田 順造(かわだ じゅんぞう、1934年昭和9年6月20日 - 2024年令和6年〉12月20日)は、日本人類学者文化人類学)。文化勲章受章者。学位は、博士パリ第5大学)。東京外国語大学名誉教授、広島市立大学名誉教授。位階従三位文化功労者

埼玉大学助教授東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授、広島市立大学国際学部教授、神奈川大学日本常民文化研究所特別招聘教授などを務めた。

サバンナモシ族と生活をともにするなかで、言葉や音楽が西洋的概念だけでは律しきれないことを実証。著書に、文字にしたのでは消えてしまう声を記録分析した『聲』(1988年)のほか、『富士山と三味線』(2013年)など。

経歴

出生から修学期

1934年昭和9年)6月20日東京都深川で生まれた[1]暁星中学校大学入学資格検定を経て、東京大学教養学科理科Ⅱ類から文化人類学・人文地理学分科に進学[1]。1958年(昭和33年)、同学科卒業後、同大学大学院生物系研究科人類学専攻へ進学[1]。在学中、フランス政府給費留学生として、パリ高等研究院第6分科へ留学[1]。1965年(昭和40年)に帰国し[1]、大学院を単位取得退学[1]

文化人類学者として

東京大学教養学部人文科(文化人類学)助手に就いた[1]。1966年(昭和41年)、埼玉大学教養学部助手となった[1]。1970年(昭和45年)、埼玉大学を退職[1]。1971年(昭和46年)、パリ第5大学へ学位論文を提出し、民族学博士号を取得[1][2]。1976年(昭和51年)、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教授となった[1]。1984年、同教授に昇格[1]。1997年(平成9年)、東京外国語大学を停年退職[1]。その後は、広島市立大学国際学部教授として教鞭をとった[1]。また、神奈川大学日本常民文化研究所特別招聘教授も務めた[3]神奈川県湯河原町に在住。

学界では、2021年(令和3年)より日本民俗学会名誉会員[4]

2024年(令和6年)12月20日誤嚥性肺炎のため死去した[5]。90歳没。死没日付を以て従三位に叙された[6]

受賞・栄典

受賞
栄典

研究内容

主としてアフリカを対象として民俗学的調査を行い、数多くの著作を著している。文化人類学の普及にも努め、クロード・レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』の翻訳でも知られる。

語りや音楽などによる非文字コミュニケーションの研究において「口頭伝承論」の領域を切り開き[3][8]、ヨーロッパ、西アフリカ、日本の3つの文化を比較考量する「文化の三角測量」を提唱した[8]

著書

単著
  • マグレブ紀行』(中公新書, 1971年、復刊 1999年)
  • 『曠野から―アフリカで考える』(筑摩書房, 1973年)
    中公文庫, 1976年/法蔵館文庫, 2025年5月。解説:柴田翔四方田犬彦
  • 『無文字社会の歴史―西アフリカ・モシ族の事例を中心に』(岩波書店, 1976年)
    改訂再刊:岩波同時代ライブラリー, 1990年、岩波現代文庫, 2001年
  • 『サバンナの博物誌』(新潮社新潮選書〉, 1979年/ちくま文庫, 1991年)
  • 『サバンナの手帖』(新潮社〈新潮選書〉, 1981年/講談社学術文庫, 1995年)
  • 『聲』(筑摩書房, 1988年/ちくま学芸文庫, 1998年)
  • 『西の風・南の風―文明論の組みかえのために』(河出書房新社, 1992年)
  • 口頭伝承論』(河出書房新社, 1992年)
    改訂:平凡社ライブラリー 上下, 2001年
  • 『地域からの世界史(9)アフリカ』(朝日新聞社, 1993年)
  • 『アフリカの心とかたち』(岩崎美術社, 1995年)
  • 『サバンナに生きる』(くもん出版, 1995年)、写真文集
  • ブラジルの記憶―「悲しき熱帯」は今』(NTT出版, 1996年/中公文庫, 2010年)
  • サバンナ・ミステリー 真実を知るのは王か人類学者か』(NTT出版, 1999年)
  • 『コトバ・言葉・ことば―文字と日本語を考える』(青土社, 2004年)
  • 『アフリカの声―「歴史」への問い直し』(青土社, 2004年)
  • 『人類の地平から―生きること死ぬこと』(ウェッジ, 2004年)
  • 『人類学的認識論のために』(岩波書店, 2004年)
  • 『母の声、川の匂い―ある幼時と未生以前をめぐる断想』(筑摩書房, 2006年)
  • 『文化人類学とわたし』 (青土社, 2007年) 
  • 『もうひとつの日本への旅―モノとワザの原点を探る』(中央公論新社, 2008年)
  • 『文化の三角測量 川田順造講演集』(人文書院, 2008年)
  • 『文化を交叉させる 人類学者の眼』(青土社, 2010年)
  • 『日本を問い直す 人類学者の視座』(青土社, 2010年)
  • 江戸=東京の下町から 生きられた記憶への旅』(岩波書店, 2011年)
  • 富士山三味線 文化とは何か』(青土社, 2014年) 
  • 『〈運ぶヒト〉の人類学』(岩波新書, 2014年)
  • 『人類学者への道』(青土社, 2016年)
  • 『レヴィ=ストロース論集成』(青土社, 2017年)
  • 『人類学者の落語論』(青土社, 2020年)
編著
  • 『黒人アフリカの歴史世界 民族の世界史 12』(山川出版社, 1987年)
  • 『アフリカ論―人間と文化の原点を求めて』(放送大学教育振興会, 1987年、改訂版 1993年)
  • 『「未開」概念の再検討』全2巻(リブロポート, 1989-91年)
  • ヨーロッパの基層文化』(岩波書店, 1995年)
  • ニジェール川大湾曲部の自然と文化』(東京大学出版会, 1997年)
  • 『アフリカ入門』(新書館, 1999年)
  • 『文化としての経済』(シリーズ国際交流 7)(山川出版社, 2001年)
  • 近親性交とそのタブー―文化人類学と自然人類学のあらたな地平』(藤原書店, 2001年、新版 2018年)
  • 『ヒトの全体像を求めて―21世紀ヒト学の課題』(藤原書店, 2006年)
  • 『アフリカ史 新版 世界各国史 10』(山川出版社, 2009年)
  • 『響き合う異次元 音・図像・身体』(平凡社, 2010年)
  • 『ナショナル・アイデンティティを問い直す』(山川出版社, 2017年)
共著・共編著
  • 武満徹)『音・ことば・人間――往復書簡』(岩波書店, 1980年/岩波同時代ライブラリー, 1992年)
  • 徳丸吉彦)『口頭伝承の比較研究』全4巻(弘文堂, 1984-88年)
  • 坂部恵)『ときをとく―時をめぐる宴』(リブロポート, 1987年)、対話録
  • 福井勝義)『民族とは何か』(岩波書店, 1988年)
  • 伊谷純一郎小田英郎田中二郎米山俊直)『アフリカを知る事典』(平凡社, 1989年、増訂版 1999年)
  • 岡田英弘樺山紘一山内昌之)『歴史のある文明・歴史のない文明』(筑摩書房, 1992年)
  • 上村忠男)『文化の未来―開発と地球化のなかで考える』(未來社, 1997年)、オンデマンド版 2007年
  • エリ・ウィーゼル)『介入?―人間の権利と国家の論理』(藤原書店, 1997年)
  • 岩井克人鴨武彦恒川惠市原洋之介・山内昌之)『岩波講座 開発と文化』全7巻(岩波書店, 1997-98年)
  • 石毛直道)『地域の世界史(8)生活の地域史』(山川出版社, 2000年)
  • 大貫良夫)『地域の世界史(4)生態の地域史』(山川出版社, 2000年)
  • 湯浅譲二)『人間にとっての音⇔ことば⇔文化』(洪水企画「燈台ライブラリ」, 2012年)- 書簡・対論
訳書
  • アンリ・レーマン『アメリカ大陸の古代文明』(白水社文庫クセジュ〉, 1959年)
  • ドニーズ・ボーム『アフリカの民族と文化』(白水社〈文庫クセジュ〉, 1961年)、重版多数
  • ローランド・オリヴァー編『アフリカ史の曙』(岩波新書 青版, 1962年)
  • アズララ『大航海時代叢書 第2巻 西アフリカ航海の記録 ギネー発見征服誌』(長南実訳、岩波書店, 1967年)- 注解を担当
  • レヴィ=ストロース 『悲しき熱帯』(中央公論社「世界の名著」, 1967年)、抄訳版(泉靖一責任編集、新版 中公バックス)
  • レヴィ=ストロース『構造人類学』(生松敬三荒川幾男、佐々木明、田島節夫共訳、みすず書房, 1972年)、度々新装版
  • クロード・メイヤスー『家族制共同体の理論――経済人類学の課題』(原口武彦共訳、筑摩書房, 1977年)
  • レヴィ=ストロース『現代世界と人類学―第三のユマニスムを求めて』(渡辺公三共訳、サイマル出版会, 1988年)
  • レヴィ=ストロース『ブラジルへの郷愁』(みすず書房, 1995年/改訂版 中央公論新社, 2010年)- 写真集解説(前者は大判)
  • レヴィ=ストロース『月の裏側 日本文化への視角』(中央公論新社, 2014年)

外部リンク

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 川田順造教授 : 略歴と著作目録」『アジア・アフリカ言語文化研究』第54巻、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、1997年9月、227-230頁。 
  2. ^ Kawada Junzo (1971). Genèse et évolution du système politique des Mosi méridionaux (doctorat : Anthropologie thesis) (フランス語). Paris 5.
  3. ^ a b c d e f 川田順造特別招聘教授が文化勲章を受章されました”. 神奈川大学公式ホームページ. 神奈川大学 (2021年11月3日). 2023年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月3日閲覧。
  4. ^ 日本民俗学会編「理事会記録」『日本民俗学』308号、2021年
  5. ^ 文化人類学者の川田順造さん死去 口頭伝承論や「文化の三角測量」:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2024年12月23日). 2024年12月23日閲覧。
  6. ^ a b 故渡辺恒雄氏に正三位 故川田順造氏は従三位 KYODO 47NEWS(共同通信社)2025年1月17日発信・閲覧
  7. ^ Junzo KAWADA”. www.academie-francaise.fr. Académie française. 2019年6月26日閲覧。
  8. ^ a b c 文化勲章に文化人類学者の川田順造さん 「文化の三角測量」を提唱:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2021年10月25日). 2022年10月3日閲覧。
  9. ^ 『官報』第1392号7頁 令和7年1月27日




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「川田順造」の関連用語

川田順造のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



川田順造のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの川田順造 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS