属の位置付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 02:10 UTC 版)
ミトラガイナ属が属するアカネ科は約600属約13000種からなる科であり、これらの属を細かくまとめる分類階級として科と属との間に2-3の亜科やいくつもの連というものが設けられてきた。ミトラガイナ属はキナノキ亜科(Cinchonoideae)のタニワタリノキ連(Naucleeae)に置かれているが、このタニワタリノキ連の下という位置付けが疑われたこともあった。 ミトラガイナ属は Schumann (1891) が定義したタニワタリノキ連に含められた。このタニワタリノキ連には球形の頭状花序を特徴とするミトラガイナ属、タニワタリノキ属(Adina)、ナウクレア属(Nauclea)、カギカズラ属(Uncaria; シノニム: Ourouparia)などが集められ、Verdcourt (1958) もこの枠組みを追認したが逆に言えばそれぐらいしか共通性がなく、同様の特徴はアカネ科のほかの連にも見られるとしてコリン・リズデイルはミトラガイナ属とカギカズラ属をタニワタリノキ連からキナノキ連(Cinchoneae)に移して亜連 Mitragyninae として括る措置を取った。しかし1995年にアカネ科の複数属から代表して1種ずつ選び、その葉緑体DNA(英語版)のタンパク質コードに関わる遺伝子rbcLの連続(シークエンス)を分析する手法による科内の系統関係の検討が試みられたところ、「キナノキ連の亜連 Mitragyninae」という区分は側系統的であり、この亜連の位置付けを支持する根拠は一切存在しないという結果が得られた。さらに21世紀に入ってからリボソームDNAの内部転写スペーサー領域や葉緑体DNAのrbcL領域、それにコーディングとは無関係なtrnT-F領域の解析に形態的特徴を加味した検討も行われた結果、ミトラガイナ属はカギカズラ属などと共に再びタニワタリノキ連に置かれるようになった。 ミトラガイナ属とほかのタニワタリノキ連の属との区別に関しては#特徴で述べた通りである。これは花粉や分子系統学的な観点からの研究が進められてから構築された区分方法であるが、かつてミトラガイナ属とカギカズラ属をタニワタリノキ連から分離しようと試みた Ridsdale & Bakhuizen van den Brink Jr (1975:543) は花粉が関係しない形態の面から以下のような検索表を設定している。 ミトラガイナ属およびカギカズラ属……2つの胎座が隔壁に沿着するか、あるいは上部3分の1で接し、長く下垂し、厚く、暗褐色から黒色である; 胎座ごとの胚珠や種子が胎座全体に沿って上向きの鱗状に重なり合っている。小果の集合が花托と結合しておらず、果実の内果皮が上から下へ裂ける。花冠裂片が互いに重ならずに接し合う敷石状である。 「狭義のタニワタリノキ連」およびヤマタマガサ属……2つの胎座は隔壁に様々な接し方をしている; 上部3分の1で接している場合は2本の短い上向きの腕と長い下向きの足でY字形となっているか、あるいは小さく短い倒卵形の突起である; 中間で隔壁に接している場合は中央に結合のある円盤状か、あるいは横長からわずかに2裂し枝分かれがない; 胎座の色は淡色である; 胎座ごとの胚珠や種子は下垂する(こちらの方が優勢)か、あるいは全方向にだだ広がり、決して胎座の全長に沿って上向きに重なり合わない。小果の集合は花托と結合せずに内果皮が下から上へ裂けるか、あるいは緩く結合して不裂開か、あるいは子房と小果の集合が融合して(疑似的な)集合果となる。花冠裂片は鱗状に重なり合う(アジアやマレー群島区系では重なり合わないものもある) さらに同じ前提のもとで Ridsdale (1978a:56) が設定したミトラガイナ属とカギカズラ属とを区別するための検索表は以下の通りである。 ミトラガイナ属……高木性である; 鉤は見られない。托葉が全縁である。花や小果が花托上に(ほぼ)無柄でつく; 花同士の間に小苞が必ず存在し、へら状で、柄が広い(糸状ではない)。花冠管が無毛である; 裂片が先端には小さな無毛の付属物を有し外側が毛深い(アフリカ産の3種のみ)か付属物を持たず外側が無毛である(アフリカ産1種、アジア産および[ニューギニアを含む]マレー群島区系産の全種)。柱頭が僧帽状から細長い形-棍棒状で先端、時に基部にもわずかに乳頭毛が見られるか、あるいは卵形-切形(せっけい)からほぼ球形で表面全体に乳頭毛がある。小果が薄い外果皮つきで、縦に胞背裂開していき、急激に枯れていく。種子が両端に短い翼(よく)を持ち、下方の翼が浅く2裂するか刻み目がつく。 カギカズラ属……つる性である; 鉤を用いてよじ登る。托葉は全縁か2裂である。花や小果は有柄で花同士の間に小苞は存在しない(アジア産やマレー群島区系産の種の場合)か、あるいは存在する(アメリカ産の種の場合); あるいは花托上に(ほぼ)無柄でつき、花同士の間に糸状から線形-へら状の小苞が見られるが、幾分不明瞭であり、托葉は2裂する(まれにデルタ字 (Δ) 状から半円形のものもあるがその場合は花冠裂片の外側に軟毛が見られる)。花冠管の外側は無毛から軟毛つきである; 裂片に付属物は見られず、外側は無毛か粉質ないしは軟毛つきから毛深い。柱頭は球状から棍棒状で、先端に乳頭毛が見られる。小果は厚い外果皮つきで胞背裂開するが宿存萼の残りの下は裂けず、急に枯れてはいかない。種子は両端に長い翼を持ち、下方の翼は深く2裂する。
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