実験方法の理解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 06:31 UTC 版)
実験方法に関しては、最低限把握したい事柄としては、 主要なパラメータの名称とその値(オーダー程度でも可) 測定精度 測定原理、及びその妥当性 実験装置の構成(模式的でも可) などがあるが、特に装置構成や測定原理は省略されることが多い。このような場合は、別途、特許文献、装置専門誌、専門書、メーカーのカタログや、総評的な論文を参照する必要がある。 世の中にある様々な計測手法、作成プロセスの中には、原理が難しいものが多数ある。すなわち、「なぜその方法で、測定対象が測定できるのか」「なぜそのような方法で、そのようなものが作れるのか」をきちんと説明することが難しいことがある。特に後者については、論文の著者らを含め、世界中の科学者が、誰もきちんと説明できないような場合さえあり得る。 しかし、例えば測定装置の装置構成や実験手順の把握だけならば、高校物理程度の知識で理解できるものがほとんどということにも注意したい。たとえば走査型トンネル顕微鏡(コンスタントハイトモード)は、装置構成の核の部分は、鋭利に尖った針と、前記の針を試料に対して水平に走査する機構と、試料 - 探間に電圧を印加する機構と、試料 - 探針間に流れる電流を測定する機構に尽きる。いずれも、高校物理程度の知識で理解可能である。この場合でも、測定原理やデータ解釈については、そこまで簡単ではない。最低限の測定原理を理解に留めても、少なくとも量子力学の初歩的な知識は必要となる。 DNAの複製を行うPCR法も、装置構成や、実験の手順の把握といった観点からはそこまで難しくない。DNAの溶液にいくつかの試薬を加えた試験管に対し 数分間の間に50℃〜90℃程度のレンジで規則的に温度昇降させればDNAが増えていくというだけである。ただし、その原理の理解や、最適条件や、阻害要因の考察等を行うことは、少なくとも学部3年相当の分子生物学の知識が必要で、装置の設計は熱工学的に極めて難しいとされる。 装置構成や実験手順のついては、論文自体にはっきりとした記述がなくても特許文献やカタログから情報を得ることができる場合もある。特許は、装置構成については近い時期に同一著者により別途特許文献が提出されている場合があるものの(下表参照)、論文に引用されない場合が多数なので調査時には注意が必要である。そのようになる理由の一つとしては、特許には権利書としての性格があり、裁判等で不利にならないような工夫をされている部分や、過去の判例等の影響を受けた記述の仕方をとることになるため、必ずしも科学的に正しいとはいえない記述が入り込む余地があり、よほどの場合を除き、論文の世界では「信頼性の高い文献」とはみなされない傾向があることによる。 「論文の内容が分からないから参考文献をあたり、参考文献の内容も分からないからさらにそこから別の参考文献をあたる」という悪循環、あるいは「分厚い総評から始め、1冊を読み終わるのに1年以上かかりそれまで何も出来ない」ということは往々にしてある。このようなことを回避するために初心者は、指導教官もしくは先輩が良い研究結果を出している研究室等で研究をスタートさせた方が良い結果を得られやすい。
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