天蚕糸とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 産業 > 紡績 > 蚕糸 > 天蚕糸の意味・解説 

天蚕糸

読み方:てぐす

天蚕糸(てぐす)とは、天蚕ヤママユ)の繭からとれる天然糸のこと。最近は合成繊維のものにもいう。

【天蚕糸の特徴
天蚕糸は絹に比べて柔らかくしなやかでしわになりにくいという特徴がある。透明で強度があり、繊維ダイヤモンド呼ばれることもある。

【天蚕糸の用途
天蚕糸は釣り糸用いられることが多い。また、信州紬などに織り込まれることもあるが、透明なため染色難しく高価であることからアクセントカラーとして用いられている。合成繊維の意味使われるテグス(天蚕糸)は手芸用品にも利用される

【天蚕糸の種類
合成繊維作られるテグス(天蚕糸)には、ナイロンフロロカーボンポリエチレン、ホンテロンなどの種類がある。

【天蚕糸の語源
天蚕糸の中国語読みテグスという読み方になった考えられている。中国語発音記号ピンイン)と読み方では、天蚕糸は「天tianティエンcan(ツァン)糸siスー)」と表される

【天蚕糸の歴史
天蚕糸は1780年代から信州安曇野穂高有明地区生産始まった明治時代生産ピーク迎えたが、第二次世界大戦などの影響生産途絶えた天蚕飼育が再開されたのは1973年のことである。

てぐす【天糸】

読み方:てぐす

テグスサン幼虫体内から絹糸腺(けんしせん)を取り出し、酸で処理して得た白色透明の糸。釣り糸用いる。合成繊維のものにもいう。てんさんしてぐすいとてんぐす


てぐす‐いと【天蚕糸】

読み方:てぐすいと

「てぐす」に同じ。


てんぐす【天糸】

読み方:てんぐす

「てぐす」に同じ。


てんさん‐し【天蚕糸】

読み方:てんさんし

山繭糸(やままゆいと)」に同じ。

⇒てぐす


やままゆ‐いと【山繭糸】

読み方:やままゆいと

ヤママユから採取した糸。繊維太く黄緑色帯び、丈夫で光沢がある。天蚕糸(てんさんし)。


天蚕糸

読み方:テグス(tegusu), テングス(tengusu), テグスイト(tegusuito), テンサンシ(tensanshi)

楓蚕樟蚕幼虫体内から絹糸腺取り、酸と食塩水とに浸し引き伸ばし乾かして精製した白色透明の糸


天蚕糸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/19 08:51 UTC 版)

天蚕(ヤママユ)の繭

天蚕糸(てぐすいと、てぐす、てんぐすいと、てんぐす、てんさんし)は、天蚕(ヤママユ)のからとった天然の繊維である。

性質

萌黄色の独特の光沢を持ち、に比べて軽くて柔らかいのが特徴である。糸の中に空気が入っているために保温性が高い。また、染料を吸着しにくいために濃く染まらない性質を利用して、家蚕糸と混織し後染めすることで濃淡をつけることも行われている。

歴史

天蚕は日本台湾朝鮮半島中国に分布する絹糸虫である。鱗翅目ヤママユガ科に属する蛾の幼虫で、和名をヤママユ(山繭、学名:Antheraea yamamai)と呼ぶ。

日本ではもともと全国の山野に自然の状態で生息している蚕で、古くは木の枝についている繭を集めてきて糸に紡いだ。天蚕の餌となるクヌギの枝に卵をつける「山つけ」という作業を経ることで、都合の良い場所で繭を得ることができる。こうした人工飼育を最初に始めたのは、長野県安曇野市の有明地区であるとされている。

天蚕は家蚕に比べて史書に記録される機会が少なく、文政11年(1828年)に刊行された『山繭養法秘伝抄』などが存在するだけである。

また明治時代以降、皇居紅葉山御養蚕所で歴代皇后が天蚕を育てることが伝統になっている[1]

有明の歴史

長野県安曇野市穂高有明では、天明年間(1781年 - 1789年)から天蚕飼育が始められた。周辺は穂高連峰の山麓につながる高原で、とともにクヌギナラなどが群生していたので、多数の天蚕が生息していた。

享和年間(1801年 - 1804年)になると、飼育林を設けて農家の副業として飼養され、文政年間(1818年 - 1830年)には穂高や近郷の松本・大町等の商人により繭が近畿地方へと運ばれ、広島名産の山繭織の原料にもなった。嘉永年間(1848年 - 1854年)頃には、糸繰りの技術も習得し、150万粒の繭が生産された。

明治20年(1887年)から明治30年が天蚕の全盛期で、山梨県北関東などの県外へ出張して天蚕飼育を行った。明治31年には有明村の過半数の農家が天蚕を飼育するに至る。面積3000haからの出作分を含めて800万粒の繭が生産され、天蚕飼育の黄金時代であった。しかし、焼岳噴火の降灰による被害や、第二次世界大戦により出荷が途絶え、幻の糸になってしまった。

昭和48年(1973年)に復活の機運が高まり、天蚕飼育が再開された。安曇野市天蚕センターで、飼育・飼育関連イベント・製品展示などが行われている。

天蚕の飼育

天蚕は家蚕のようにの木を育てる手間はないが、繊細な虫であり人工飼育するには細かな配慮がなされる。飼育場所として日当たりと水はけの良い、乾燥気味の場所が適している。放飼期前にホルマリン液で飼育場所を消毒し、病害虫から天蚕を守る必要がある。天蚕の病気には、微粒子病・膿病・軟化病・硬化病などがあるが、とくに皮膚に黒い斑点の現れる微粒子病は経卵伝染する恐ろしい病気である。

天蚕の飼育には山飼いと桶飼いの二つの方法がある。山飼いは植栽した樹園を作って飼育するものであり、桶飼いは水を入れた容器に小枝を差して飼育する方法である。色が良く、繭層の厚いものが良い繭である。

製糸工程

一般的に以下の手順で行われる。

殺蛹
天蚕繭は、羽化するまで約40日あるが、生繭で繰り糸をする以外は、燻蒸などにより蛹を殺す。
貯蔵
風通しの良いところでカビの発生を防ぎながら保管する。
選繭
自然の中でつくられた繭は不揃いなので、繰り糸を容易にするために選繭し、不良の繭を取り除く。
煮繭
天蚕は、雨水などから中の蛹を保護するために蝋分を多く含んでいて水を通しにくくなっている。ある程度の時間をかけて煮ることによって、糸引きの過程での切断やもつれを防ぐ。
繰り糸
座繰り機などを用いて、鍋の湯で煮繭しながら糸口を求め、5 - 7粒の繭の糸を縒り合わせて一本の糸にする。天蚕繭の場合は、繭の構造から外層部を手で一皮めくって糸口を見つける方法をとらねばならない。
揚げ返し
小枠に巻き取られた天蚕糸を大枠に巻き替える。
仕上げ
大枠から外して二つ折りにして結束する。

天蚕繭の製糸は、家蚕の繭に比べて解除率が悪く、作業効率が悪い。

中国の養蚕状況

中国では柞蚕(さくさん)と樟蚕およびひま蚕の3種を利用している。

柞蚕(学名:Antheraea pernyi)はコナラクヌギカシワナラなどの葉を食して生育する。生育は春・夏の2季である。糸質は家蚕より幾分粗いが耐久力があり、衣料・カーテンパラシュートなどに利用される。三大産地は遼東半島・山東丘陵・河南省の伏牛山地である。

樟蚕(和名:テグスサン、学名:Eriogyna pyretoum[2])は江西省広東省広西省および台湾に産する。クスカエデで飼養され、樟蚕糸は強くて耐久性があるため釣り糸用として利用される。この釣り糸は魚には見えにくく、一般には上物といわれている。

ひま蚕(学名:Samia cynthia ricini )の主要生産地は山東省河北省河南省安徽省広東省広西省であり、ヒマタピオカの葉を利用しての生産が進んでいる。

テグスと天蚕糸

テグスは漢字で「天蚕糸」と書き、もともとはテグスサン(学名:Eriogyna pyretorum/Saturnia pyretoum)の幼虫の絹糸腺から取られる糸のことであった。のちに釣り糸、さらにはナイロンなどの合成繊維でできた糸のことを一般にテグスというようになった[3]

参考文献

  • 黄就順『現代中国地理 -その自然と人間-』帝国書院、1981年。
  • 衛傑文・楊関坭・他編『現代中国地誌』古今書院、1988年。 ISBN 4-7722-1104-7
  • 日本工芸会近畿支部・編『工芸の博物誌 -手わざを支える人ともの-』淡交社、2001年。

脚注

  1. ^ “皇后さま「山つけ」ご作業”. 産経新聞朝刊. (2017年5月9日). https://www.sankei.com/article/20170508-IPKCUWATEBKU7KKXC2YU6UYMPY/ 
  2. ^ 养蚕与丝绸业的发展”. 中国科普博览. 2020年11月13日閲覧。
  3. ^ 大原賢二. “テグスになった蛾”. 徳島県立博物館. 2020年11月13日閲覧。

外部リンク


「天蚕糸」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



天蚕糸と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「天蚕糸」の関連用語

天蚕糸のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



天蚕糸のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
実用日本語表現辞典実用日本語表現辞典
Copyright © 2025実用日本語表現辞典 All Rights Reserved.
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの天蚕糸 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS