天体中の液体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 09:57 UTC 版)
地球は太陽系において表面に液体の水を湛えた唯一の惑星であり、これがプレートテクトニクスや大気中の二酸化炭素濃度調整、そして生命の存在を許容する特徴づけを行っている。このように、液体の水が惑星表面に存在可能な恒星からの距離領域をハビタブルゾーンと言う。 火星の北半球にかつて液体の水が大量に存在したか否か、そしてどのような理由で現在の姿になったのは議論が分かれるところである。マーズ・エクスプロレーション・ローバーによる探査で見つかった扇状地状地形などから、火星には少なくとも地殻上に広く水が溜まった箇所が1つは存在することを突き止めたが、この規模については未だ分かっていない。金星表面からは河川跡のようなチャネル地形が発見されているが、これは粘度が低い液体の溶岩流が流れた跡である。木星中心にある岩石質の中心部にはまわりに広大な液体の大洋がある可能性を、ハーバード大学教授のカール・セーガンが示唆した。その体積は地球の海の620倍と試算した。 マントルと分離している充分な量の水やメタンなどの液体は、衛星であるタイタン、エウロパ、カリスト、ガニメデ等にも地下に存在すると考えられる。同様に、イオにはマグマの海があると考えられる。液体の水が存在する決め手にはなっていないが、土星の衛星エンケラドゥスには間欠泉が見つかっている。その他の氷状衛星や太陽系外縁天体も内部に液体か、現在は氷結しているが過去には液体であった水を持っていた可能性がある。 太陽系外惑星では、グリーゼ581cがハビタブルゾーンにあると判明した。しかしながら、もし温室効果が過剰ならば、表面に液体の水を維持する以上の気温にある可能性は捨てられない。逆にグリーゼ581dは温室効果によって表面が液体の水を持ちうる温度まで引き上げられている可能性もある。系外惑星オリシスも、その大気が水蒸気を含んでいるかが議論となっている。グリーゼ436bは、「高温の氷」が存在すると考えられている。これらの惑星は液体の水を保持するには高温過ぎるが、そこに水の分子が存在するとすれば、他に適当な温度の惑星が発見される可能性がある。 惑星内部にも液体状の構造が存在する可能性が示唆される。地震波による測定から、地球半径の約半分程度の大きさを持つ核は、外側に液体の外核を持つことが分かった。これは溶融した鉄・ニッケル・硫黄が混ざり合った高密度の流体であり、地磁気を発生させる原動力(ダイナモ効果)となっている。同じ地球型惑星の中では、水星からも磁場が観測されており、これは逆に水星内部にも液体の核が存在する可能性が指摘されている。木星型惑星惑星の内部では、高い圧力によって金属水素が液体状になっていると考えられる。天王星型惑星も内部にアンモニアやメタンが高温・高圧の環境下で凝縮液体となっており、これらの対流が惑星磁場を発生させる元となっている。
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