大統領の行政権(執行権)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 04:50 UTC 版)
「アメリカ合衆国の政治」の記事における「大統領の行政権(執行権)」の解説
詳細は「アメリカ型大統領制」を参照 アメリカ合衆国大統領は憲法上は行政権の単独保有者でアメリカ軍の最高司令官である。その選出も例外事態を除いてはアメリカ合衆国議会に左右されない。連合規約時代にはそもそも強力な行政部が必要との認識が無かったため、連合会議(あるいは大陸会議で、これもCongressである)が委員会を適宜設け行政をさせていた。 しかし日本にあって受けるイメージとは異なり、アメリカの大統領は内政を指導する強力な手段を持っていない。世論形成への指導力は大きいが、法案提出権は無い上(拒否権はある)に予算も個別法律なので完全に議会の権限である。大統領が一般教書演説などで議会に対し、法律制定や予算調達を要請するといったシーンがよく見られるのはこのためである。 他方で外交権は基本的に大統領に属しているが、上院が出席議員の3分の2をもって同意する条約承認権を持っており、事実上の強い留保となっている。 各省長官を初めとする連邦政府高官の任命には上院の助言と同意が必要であるが、大統領と上院多数派の政党が異なる場合においても、上院多数派が一致して自らの党員の登用を要求するような事態は起こっておらず、大統領と異なる政党の人物が登用されるケースは大統領と上院多数派の党派の一致・不一致を問わず異例のことである。連邦政府の高官人事は概ね大統領のイニシアティブによって行われ、また大統領令(Executive order)による連邦政府・軍への直接命令も可能であるため、連邦政府は大統領の指揮に従って動くことになる。 また教書をアメリカ合衆国議会に送り、適時適切と思える立法を勧告することが憲法上の権利として書かれており、事実これは世論形成上に重要である。世論が議員の当落を左右する以上は議員は「グレート・コミュニケーター」としての威信を持つ大統領に敬意を払わざるを得ない。 さらに法案への拒否権の効果は実に高いので、これを実際に頻繁に行使したり、或いは行使するとの威嚇力により議会の立法を指導することもできる。ただしこれは議会多数派が一歩も引かない場合は、大統領自身も必要性を認めている法律が問題解決方針の差のために全く制定されない可能性があり、その後の非難合戦(議会と大統領での廃案責任の押し付け合い)の行方によっては大統領も深手を負う可能性もある。
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