上院の助言と同意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 02:01 UTC 版)
「合衆国最高裁判所」の記事における「上院の助言と同意」の解説
最高裁裁判官の候補者の指名は大統領の権限であるが、任命には上院の「助言と同意」が必要である。大統領が候補者を指名すると、上院司法委員会で候補者に対する質疑応答と投票が行われる。続いて上院本会議で投票が行われ、上院全体の過半数の承認によって正式に任命される。2016年までに上院が投票によって承認を拒否した候補者は13名にのぼる。上院による承認は大きな政治的争点となることも多い。近年では1987年にロバート・ボークの承認が否決されたほか、1991年のクラレンス・トーマスの承認手続ではセクシャルハラスメント疑惑が問題となり、質疑応答では特にセクハラを受けたという女性まで証人喚問して大論争となった挙句、賛成52対反対48でかろうじて承認されている。また、2018年のブレット・カバノーの承認手続でも同様のセクシャルハラスメント疑惑が問題となった末に、賛成50対反対48でかろうじて承認された。 最高裁裁判官の候補者は、1990年代のクリントン政権までは、前述のクラレンス・トーマスの場合を除けばほとんどが圧倒的な賛成多数で承認されており、中にはジョン・ポール・スティーブンスやサンドラ・デイ・オコナーやアンソニー・ケネディなどのように上院全員の賛成で承認された者もいた。しかし、2000年代のブッシュ政権からは、サミュエル・アリートの賛成58対反対42や、ニール・ゴーサッチの賛成54対反対45などのように、候補者が承認される際の賛成数が大幅に減少している傾向がある。クリントン政権下の1994年にスティーブン・ブライヤーが賛成87対反対9で承認されてから、ブッシュ政権下の2005年にジョン・ロバーツが賛成78対反対22で承認されるまでの11年間にわたり、後述の通り最高裁裁判官の交代が全く行われなかった期間があり、この空白の期間を境に、最高裁裁判官の候補者が承認される際の賛成数が従来よりも明らかに減少している傾向が見られる。 大統領が候補者を指名しても、様々な事情で上院本会議による投票に至らないこともあり、議事妨害により投票が行われない場合や、上院司法委員会で否決される場合がこの例に挙げられる。また上院の承認を得る見込みがないと大統領が判断した場合は、大統領自らが指名を撤回することもある。ロナルド・レーガン大統領はコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所判事のダグラス・ギンズバーグを指名したが、マリファナ使用の疑惑を受けてこれを司法委員会による審査の前に撤回している。またジョージ・W・ブッシュ大統領は2005年、辞任を表明したサンドラ・デイ・オコナー判事の後任としてホワイトハウス首席法律顧問だったハリエット・マイヤーズを指名したが、これには身内であるはずの共和党右派がマイヤーズが独身女性でありLGBTコミュニティに理解的であることなどを理由に猛反発、これを受けてマイヤーズ自身からの依頼によりブッシュが指名を撤回したという例がある。 議事妨害による指名拒否の例としては、1968年にリンドン・ジョンソン大統領が陪席判事だったエイブ・フォータスをアール・ウォレンの後任の最高裁長官に指名した際、上院は議事妨害により承認を阻止した。 1980年代までは裁判官の承認は比較的速やかに行われ、トルーマン政権からニクソン政権の時代には1か月ほどで承認されていた。ところがレーガン政権以後は承認に時間がかかるようになり、これは最高裁裁判官が政治に果たす役割が拡大しているためでないかと指摘されている。
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