堕落と救済とは? わかりやすく解説

堕落と救済

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/31 23:42 UTC 版)

ヤーコプ・ベーメ」の記事における「堕落と救済」の解説

ところで現実の世界を見渡すとき、そこには悪があふれている。ベーメはこの悪の起源についても語る。伝統的な神学上の問題として、完全な善である神が世界創造したというならなぜ世界には悪が存在するのかというものがある。 ベーメの神観では、神は純粋な善であるわけではなく、暗い面をも持っているわけだが、それが直接この世の悪の原因となっているわけではない可視的自然の創造以前創造され天使世界悪の起源があるというのである天使怒りの暗い火と愛の明るい火を精神原理とするものとして創造された。怒りを愛に従わせることが善なのであるが、自由な意志にとっては逆も可能である。そして天使自由な意志持っていた。大天使のひとり、ルシファーは自由をマイナス方向向けて用いた第一性質第二性質には悪が潜在的に存在していたが、ルシファーはこの二つ性質対し自らが神たらんとするイマギナチオを向けたのであるルシファーの神への反逆はマイナスの創造として自由のエネルギー逆流させ、闇の鏡をつくりだす。闇の鏡はソフィアの鏡と異なって多様な虚像映し出す。これが空想である。ルシファーは闇の鏡をのぞきこんで空想踊らされ、ますますエゴ肥大化させる。かくして天使の国は怒りの暗い火が燃え地獄明るい光の天国分裂してしまう。 しかし神は世界混乱そのままにしておかないルシファーの闇の創造に対して再び光の創造発動する創世紀第一章で神が「光あれ」と言ったところがこの創造である。ここで時間空間可視的自然、そして人間創造される最初の人アダムは神が自己実現してきた最後到達であって、その中にはすべてが見出され天使にも勝るというまさに至高存在である。当初アダム男と女両方性質合わせ持つ完全な統一であった。だが、アダムもやがて堕落する。神から愛され、自らも自らを愛す素晴らしきアダム悪魔手に入れたい思った悪魔アダム誘惑し不完全なる多の世界アダムの心を向かわせる。 この堕落によりアダムの中の女性部分である乙女ソフィアは天に帰ってしまった。それとともにアダム中心として調和していた宇宙統一失って複雑な多の世界化すアダム孤独となり、神はそれを憐れんで新たなる女性エヴァ創造した。しかしエヴァソフィアの完全な代理とはなりえない。アダムエヴァ中にソフィア求め男女はこうして惹かれ合ううになるものの、性によって苦しみもするのである。 だが、アダム堕落ルシファーのそれと違う点がある。ルシファーが自らの自由意志で神に反逆したのに対しアダムそそのかされて罠に落ちたに過ぎない。そして人間時間の中の存在である。時間には対立するものを調停する働きがあるので、人間の罪は許される可能性があるのだ。それに対しルシファー永遠存在であるため、罪が贖われるということがない。神は堕落した人間を救うため、救世主キリスト遣わすキリストエヴァソフィア化である処女マリアから生まれたので、アダム喪失した男性-女性両極性持っている。いわばキリストとは第二アダムである。キリスト堕落そもそもの原因である自由意志放棄し、完全な受動性のもとに十字架かけられる。この第二アダムたるキリストに倣うことで我々は救われるベーメ述べている。キリスト十字架背負いすすんで迫害嘲笑会い殺されることで、火も焼き尽くすことができない新し人間として生まれることができるという。

※この「堕落と救済」の解説は、「ヤーコプ・ベーメ」の解説の一部です。
「堕落と救済」を含む「ヤーコプ・ベーメ」の記事については、「ヤーコプ・ベーメ」の概要を参照ください。

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