地球への帰路と大気圏再突入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/25 02:43 UTC 版)
「アポロ8号」の記事における「地球への帰路と大気圏再突入」の解説
地球への帰路は、飛行士たちにとって最もリラックスできる時間だった。地上のスタッフが軌道を正確に計算してくれている限り、宇宙船はエンジン噴射から二日半後に太平洋に着水することになっていた。 クリスマスの午後、飛行士たちは五回目のテレビ中継を行った。今回の中継では船内を案内し、その中でどのように生活しているのかなどを紹介した。放送を終えたとき、彼らは食料庫の中に統括責任者のスレイトンからの小さなプレゼントがあるのを見つけた。詰め物がされた本物の七面鳥料理で、これはベトナム戦争で戦場にいる兵士たちが受け取ったのと同じものであった。またスレイトンからは、ブランデーの小瓶が三つ用意されているというもう一つのサプライズがあったのだが、ボーマンの指示で地球に帰るまでそのままにされていた (宇宙船内ではアルコールは禁止されていた)。瓶の蓋は飛行後数年たっても開けられることはなかった。この他に、飛行士の妻たちからのプレゼントも用意されていた。この翌日、発射からおよそ124時間後に最後となる六度目のテレビ中継が行われた。この四分間の放送の中で撮影された地球の映像は、これまでで最良のものだった。 これといって重要な仕事もない二日間の飛行の後、飛行士たちは大気圏再突入の準備を始めた。再突入の作業はすべてコンピューターが行うので、飛行士たちがするべきことは宇宙船を正しい姿勢に置く作業だけだった。もしコンピューターが故障した場合は、ボーマンがコンピューターを引き継ぐことになっていた。 いったん司令船が機械船から切り離されてしまうと、残された道は大気圏再突入しかなくなる。大気圏上層部をかすめる6分前、飛行士たちは地上のスタッフが計算で予言したとおりの時間に地平線から月が昇るのを見た。。宇宙船が大気と衝突すると、高温のプラズマが船体を包みはじめた。コンピューターが自動的に姿勢を制御し、司令船は小石が水面を跳ねるように大気圏の上層部を何度かバウンドしてから高度を下げた。機体は徐々に速度を落とし、減速Gは最大で6G (59 m/s2) に達した。高度3万フィート (9,100m) で減速用の小型パラシュートが開き、続いて1万フィート (3,000m) で三つのメインパラシュートが開いた。着水点はハワイ南方の北太平洋上北緯8度8分 西経165度1分 / 北緯8.133度 西経165.017度 / 8.133; -165.017 (Apollo 8 estimated splashdown)であった。 着水した瞬間、司令船はパラシュートに引きずられて「安定 (Stable)2」と呼ばれる逆さまの状態になった。約6分後に上部にある三つのエアバッグが開き、頂点を上にした状態に正されたが、高さ3mの波にもまれてボーマンは船酔いを起こしてしまった。司令船が着水したのは日の出前で、回収船USSCヨークタウンから潜水士が到着したのは着水の43分後だった。さらにその45分後、三人の飛行士たちは無事艦上の人となっていた。
※この「地球への帰路と大気圏再突入」の解説は、「アポロ8号」の解説の一部です。
「地球への帰路と大気圏再突入」を含む「アポロ8号」の記事については、「アポロ8号」の概要を参照ください。
- 地球への帰路と大気圏再突入のページへのリンク