地域統合とは? わかりやすく解説

リージョナリズム

(地域統合 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/17 07:28 UTC 版)

リージョナリズム: regionalism)とは、文脈によって2つの意味を持つ政治用語である。

意味としては共に「地方主義」「地域主義」と呼べるが、2つの定義は大きく異なり、どちらの意図で用いているかに留意する必要がある。

地域主義としてのリージョナリズム

国際的なリージョナリズム

日本においてはリージョナリズムとは地域的に近接し、一定の共通性や利害を共にする複数のが、経済的・社会的・軍事的にその関係を強化することを目指す立場を指す場合が多い。こうした場合、リージョナリズムは地域統合と訳されることもある。

国際的なリージョナリズムは、グローバリズムナショナリズムと対立することがあると考えられることがある。グローバリズムは地球あるいは世界全体の利益を追求する立場であるので、リージョナリズムが追求する利益の範囲は狭すぎ、逆にナショナリズムは一国を中心とした利益を追求する立場であるのでリージョナリズムが追求する利益の範囲は広すぎる、という理解からである。

しかし、覇権主義的なナショナリズムは、一国を中心としたリージョナリズムに帰結するのであるから、こうした理解は必ずしも正しくない。そもそも、リージョナリズムは歴史的には第二次世界大戦前のブロック経済に由来するものであり、帝国主義の新たな形態であると捉えることも可能である。

さらに、そもそも地域(リージョン)は相互排他的なものではなく相互重複的かつ重層的に設定可能であるから、グローバリズムと整合的なものと捉えることも可能である。環境経済学者の寺西俊一は、グローバルな利益の実現は各層でのリージョンの利益を積み上げることによってこそ可能になる、というインター・リージョナリズムの考え方を提唱している[1]

戦後、冷戦のもと、ブロック経済の批判的な継承として誕生したECEFTA、あるいは東南アジアで作られた ASEAN南アジアSAARCアフリカAU、南米での南部共同体(メルコスール)、太平洋諸島フォーラム(PIF)などの地域統合の動きは、何れもリージョナリズムが具体的な形で実現したものである。それらには、米ソ2大超大国、あるいはそれらに準ずる地域大国や、他地域での地域統合に対し、弱小を自認する国々が地域的に連合して対抗するもの、あるいは少なくとも地域内の利害対立を調整して域外国につけいる隙をなくしていくためのもの、という性格もあった。冷戦後、旧社会主義圏を含めた自由、無差別、多角的貿易秩序を目指すWTOの動きが本格化する中で、リージョナリズムは特定地域間の経済的取り決めを促進する点で相反するものとみなされる。しかし、WTOの前身であるGATTの加盟国がGATTのルールによらず、2国間あるいは数カ国間で輸出自主規制措置や自由貿易地域の合意などがとられた事実と照らし合わせると、全世界規模での貿易の取り決めは難しく、地域的経済統合により拡大された経済関係を作り出すことに意義があると言われている。

ヨーロッパではECがEUとして統合を強めるとともに範囲を拡大し、北米でもNAFTAが成立するなど、リージョナリズムは強まる方向にあったが、2010年代になると欧州懐疑主義アメリカ・ファースト高まり、政治を二分するテーマとなっている。

アジアにおいてもヨーロッパ北米の試みに刺激され、地域的経済統合の兆候があった。1991年には ASEAN経済閣僚会議で「東アジア経済グループ」が提唱されたものの、アメリカなどによりアジアでのブロック政策として強く批判され、具体化しなかった。その後2000年代に「東アジア経済グループ」を発展させた東アジア共同体の構想が唱えられたが沈静化し、2010年代には首脳会談開催も困難なレベルに対立が加速していった。

脚注

  1. ^ 寺西俊一『地球環境問題の政治経済学』東洋経済新報社,、1992年、138-139頁。 

関連項目


地域統合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 14:17 UTC 版)

北マケドニア」の記事における「地域統合」の解説

北マケドニア中欧自由貿易協定南東欧協力プロセス加盟しており、ユーゴスラビア崩壊後新しバルカン諸国地域協力体制枠組み加わっている。2021年7月末には、人やモノ、金の自由な移動保障する経済圏構想「オープンバルカン・イニシアチブ」の立ち上げセルビアおよびアルバニアとともに提唱した。またNATOおよび欧州連合EU加盟目指してきた。 2019年2月北マケドニア共和国への国号変更で、NATOEU加盟国であるギリシャによる反対解消したため、NATO加盟国マケドニア2019年2月6日マケドニア30番目のNATO加盟国とする議定書署名し2020年3月27日正式に加盟した一方でEUへの加盟については国名変更後2019年10月EU首脳会議フランス加盟拒まれたが、2020年3月には加盟交渉に入ることで合意している。

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