古典古代の復興
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 15:08 UTC 版)
ルネサンスの特徴のひとつに、古典古代の復興がある。数々の古典が再評価され、新たに翻訳される書物も多かった。この運動は聖書にもおよび、原典回帰の解釈が行われた。シュマルカルデン同盟で外交交渉を担当した歴史家ヨハネス・スレイダヌス(1506年? - 1556年)は、プロテスタントの普遍史解釈を代表する『四世界帝国論』(1556年)を執筆した。基本的に従来の普遍史を踏襲してはいるが、同書の年代はヘブライ語版聖書に基づいて記述されている。この点を以ってしてもスレイダヌスそしてプロテスタントが中世的カトリックに批判的立場を取っていたことを示す。 また、四世界帝国の解釈についても、ヒエロニムス以来の伝統を覆した。具体的には、聖書記述にありながら古代以来の普遍史では意図的に外されていたカルデアに第一帝国の地位を与えた。そして、アッシリアを古代ローマで認識されていたニヌス王やセミラミスに始まる伝説の国「旧アッシリア」と、聖書記述にあるプル王以後の国「新アッシリア」の二つに分けて解説し、聖書「ダニエル書」との整合性を持たせた。ただし第二帝国以後について、スレイダヌスはオットーの『年代記』を引き継ぎ、ローマについても神聖ローマ帝国まで皇帝権が継承されているとした。彼自身は宗教弾圧を加えたカトリック教会やカール5世を批判する立場にいたが、ダニエル書に則り第五の帝国は生まれ得ないという原理から、皇帝や教会を否定することはできなかった。 プロテスタントの立場から普遍史を纏める作業は、マルティン・ルターの片腕、フィリップ・メランヒトン(1497年 - 1560年)が『カリオン年代記』(1532年)で行った。その特徴は、天地創造からイエス誕生までの期間を大幅に短縮し、また『四世界帝国論』同様に聖書中心主義を貫き世界帝国をカルデアから始めた点にある。ただしそれは、カルデアの解釈を拡大し、アッシリアをその中に含むことで対応したものである。これらの点を除けばメランヒトンは古典的普遍史を継承したものだったが、彼は宗教改革の時代にドイツの各大学へ歴史学講義を設置するよう指導し、『カリオン年代記』もそこでの教科書として執筆していた。彼は、歴史学を大学学問に加える大役を果たしたが、それはプロテスタント的といえど普遍史の枠組みに基づいていた。
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