四世界帝国
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 15:08 UTC 版)
「歴史書」までが過去の出来事を記録したものに対し、第3期は「ダニエル書」を元とした未来の預言を語る形式が採られている。この書では、分裂後の北部イスラエル王国を滅ぼし人民をバビロンに連行する、いわゆるバビロン捕囚を行ったカルデアの王ネブカドネザル2世が見た不思議な夢を預言者ダニエルが未来に起こる出来事だとして解説している。 王の夢は、頭部が金、腕や胸部が銀、腹部と腿が青銅、脛や足が鉄と陶土で出来た大きな人物像が現れると、自然に切り出され石が出現して像の足に当たる。像はそれだけで粉砕され、一方の石は山となって大地を覆ったという。この夢を王は誰にも語らなかったが、ダニエルが言い当て、解説を述べた。それによる、頭の金はカルデア王国を象徴し、残る身体の三箇所はそれぞれカルデア以後に現れる三つの国を示すという。それに対し石は神の国を表し、世界はカルデアを1番目として現れる世界帝国の4番目が崩壊するとともに、この世に神の国が現出するというものだった。 同じ暗喩は続く章にもある。第7章では、鷲の翼を背に持つ獅子、熊、4つの頭と翼を持つ豹、そして10本の角を持つ「第四の獣」に11本目の小さな角が生える様が描写され、これらも四世界帝国を示すとダニエルは示唆する。 さらに第8章では二本角の雄羊と一本角の雄山羊が戦う幻影について語り、羊の二本の角はメディア王国とアケメネス朝ペルシア帝国を象徴していると言及する。その羊を、山羊は角と引き換えに倒すのだが、この角こそアレクサンドロス3世を示すと言う。代わって山羊の頭には新たな4本の角が生え、そのうちの一本にはさらに小さな角が生じるという。この小さな角は大きくなって「天の衆群」を虐げ「聖所」を破壊したという。ダニエルはこの山羊を「ギリシア人の王」(第8章、20-21)と解説する。 この「ダニエル書」が示す意味は、 金の頭=獅子=カルデア(新バビロニア) 銀の胸=熊=羊の角=メディア 青銅の腹=豹=羊の角=ペルシア 鉄と陶土の足=「第四の獣」=山羊=ギリシア がそれぞれ世界帝国として地上に現れ、4番目の世界帝国が崩壊する際に、石=永遠の「神の国」が実現するという預言であった。 「ダニエル書」は、ネブカドネザル2世が在位した紀元前6世紀を舞台としているが、実際に執筆された時期は紀元前166年と考えられている。この頃は既にギリシアのマケドニア王国は、鉄と陶土の足が示す獣が持つ複数の角のように分裂していた。「第四の獣」の11本目の角は山羊の小さな角とともにセレウコス朝の王アンティオコス4世エピファネスを暗示しており、当時エルサレムが王によって破壊された出来事を黙示すると言われた。
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