取引開始時および取引開始後の厳格化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 03:34 UTC 版)
「預金」の記事における「取引開始時および取引開始後の厳格化」の解説
近年は、特殊詐欺など、犯罪目的・悪用目的に銀行口座を開設する事例が多くなっており、その影響で、次第に新規口座開設の基準が厳しくなってきている。 貯金のケースについても、民営化後に個人名義での通常貯金などの通帳冊数の制限がなくなったゆうちょ銀行についても、2012年以降は、相応の事情がない場合は、原則新規の貯金預入は1科目1冊までとすることを明言しており、以降は、流動性貯金に関しては、通常貯金、通常貯蓄貯金、振替口座の各1取引に原則限定されている。 また、暴力団など反社会的勢力による資金洗浄に利用される事を防ぐため、あるいは、貧困ビジネスに関連して、囲い屋による無料低額宿泊所への入居者名義の口座を不正開設し、当該団体により着服されるのを防ぐ目的もあることから、犯罪による収益の移転防止に関する法律の改正により、反社会的勢力ではないことの表明・確約をしなければ口座開設できない。改正前からの取引についても、随時、窓口での取引や他の手続きの際に、書面で確約や取引目的や職業の申告を行うことで確認を行うケースもみられる。 既存の暴力団関係者が開設した銀行口座については、2017年7月、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の暴力団排除条項に基づく解約を有効とした判決が最高裁判所で確定。読売新聞の調査によれば、2018年5月までに59行約1300件の銀行口座が解約されている。これらの口座の中には、暴排条項が適用される以前のものに対して遡及適用したものも含まれる。 更に、事務コスト・口座維持コストや名寄せなどの預金管理経費の引き締め(特に世界金融危機 (2007年-)以降)という要因があり、口座開設時の届出内容に虚偽事項があることが判明した場合、または、口座開設時の提出資料が真正でないことが判明したとき、口座開設申込時に行った表明・確約に関して虚偽申告したことが判明した場合、預金口座を解約され、預金を銀行から引き取りにいかなければならなくなる。地方銀行や第二地方銀行では、営業エリア外の顧客を対象として顧客確保を目的としたインターネット上の支店でさえも開設渋りが多くなっている。これに対して反社会勢力の中には名前を変えるために結婚と離婚を繰り返す者もいるという。 その他、景気低迷や信用不安によって引き起こされた預金減少による口座管理経費の問題から、りそな銀行が休眠口座管理手数料を徴収したり、大手都市銀行やネット銀行でも優遇プログラムの引き締め(例として、時間外手数料やコンビニATM手数料などの毎月の無料回数の制限)など、新たな負担を強いられる状況も発生している。犯罪収益移転防止法の策定以後、キャッシュカードは転送不要の本人限定受取郵便(特定事項伝達型)で届けられており、犯罪目的で口座開設をするのが大変困難な仕組みになっている。 なお、犯罪目的で口座開設した事が事後的に明らかになった場合は口座凍結、財産没収が可能である。これについては、犯罪防止には一定の効果が出ているとされているが、一方で、犯罪とは無関係の口座が誤って凍結され、生活費が引き出せなくなったとの苦情が、預金保険機構などに多数寄せられている。凍結に際して第三社が審査するシステムが無いことも問題視されている。
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