北大西洋版TPP(TTIP)
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「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」の記事における「北大西洋版TPP(TTIP)」の解説
ノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツはEUが大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)を締結するくらいならイギリスはEUを離脱すべきであると考えている。 TTIPによって企業には主権国家を訴える権限が与えられ、その弊害は大きい。国際連合の調べでは2000年から2015年の間にアメリカ企業が主権国家を訴えることで何十億ドルという金額を勝ち取っている。2000年度だけでもアメリカ企業は130件の法的措置を講じている。フィリップモリスはタバコの警告パッケージ規制が企業の利益を損なうとしてオーストラリアとウルグアイを訴えている。 EUの食品安全基準はアメリカより厳しいがTTIPによってEUの基準がアメリカの基準まで下げられてしまうと考えられている。そのためTTIP反対の立場の人々は、TTIPが可決されれば欧州の食品市場がアメリカのGM作物や農薬濃度の高い食品で荒らされることを懸念している。 TTIPによって失業が悪化することはEU側も認めており、EU加盟国に対してTTIP批准後に失業対策を強化するように呼びかけている。 とはいえイギリスがEUを離脱した場合でもTTIP類似の協定が締結されるかもしれない。デービッド・キャメロン首相はTTIPの熱狂的支持者の一人であり、イギリス・アメリカの間でTTIPと同様の協定が結ばれる可能性がある。だが離脱の場合はキャメロン首相が辞任する可能性もある。 2016年5月19日、保守党の元副党首であるピーター・リリーとその他の欧州懐疑派の保守党議員らが、TTIPから明確に国民保健サービスを除外するために国王演説に修正を加えるよう働きかけた。それら保守党の議員が恐れたのはTTIPによって国民保健サービスが民営化されること(そして貧しい人が医療サービスを受けられなくなること)である。ジェレミー・コービンも国王演説の修正を支持した。 コービンは、TTIPによって国民保健サービスの不可逆的な民営化が引き起こされるだろうと考えている。 「TTIPは公的サービスをさらに民営化し、その民営化を不可逆的にするでしょう。」「多くの人々からTTIPについての手紙をもらっています。TTIPが環境・食の安全・労働者保護・消費者の権利などを脅かすことを多くの人々が懸念しているのです。これらの懸念はまっとうなものです。」 コービンは拒否権を行使してTTIP批准を阻止すると宣言した。だが労働党の議員であるKate Hoeyの意見では、TTIPはEUの特定多数決方式で決められたものであるから(EU加盟国である限り)拒否権を発動できないのだという。JMLのチェアマンであるJohn Millsはこの意見に同意し、コービンは履行できない約束をしていると論じた。 コービンは、もし国民投票の前にTTIPが合意に至ったとしてもEU残留を支持するかという質問には答えなかった。これはコービンが残留派のキャンペーンを支持していないことを示唆するものである。 2016年6月3日、北アイルランドの労働組合の一つであるNorthern Ireland Public Service Alliance(NIPSA)がEU離脱支持を表明した。NIPSAによればEUは富裕層のための組織であり、労働者の意義深い助けになるようなことを何一つ行っていないのだという。NIPSAは、EUの政策は基本的に緊縮財政・民営化・労働者冷遇だと論じた。そしてTTIPは公的サービスの民営化を引き起こすと懸念し、これがEU離脱支持の決定的な理由となった。 2016年6月10日、労働党の議員であるDennis SkinnerがEU離脱支持を表明した。TTIPによって国民保健サービスが民営化されるという懸念が、SkinnerがEU離脱支持を固める決定的要因となった。
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