化学兵器の廃棄処理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 22:38 UTC 版)
「遺棄化学兵器問題」も参照 化学兵器の特性上、使用期間切れや条約による規制などで廃止とされた化学兵器の廃棄については、注意深い処理を行うことが必要である。 主に反応性の強い薬品では、太陽光に含まれる紫外線などの働きにより、短期間で無害な物質に分解するとされるが、中には長期間の汚染を発生させ、核兵器ほどではないにせよ周辺環境を悪化させるものもある。無毒化処理には強酸性や強アルカリ性の薬品と反応させたり、強力な紫外線照射や電流といったエネルギーを与え、分解又は化合を促すことで無毒化させる。または大量注水して安全濃度にまで薄めるなどの方法も取られるが、単純に薄めた場合は有害な汚水が大量に発生することもあり、広域土壌の除染には向かない。ただしサリンは加水分解によって無毒化するため、水の散布が有効である。 かつては土中への埋没処分や海洋投棄がしばしば行われたが、これが現在でも問題となっている事例がある。 日本では、神奈川県寒川町、千葉県習志野市では、裸地以外の舗装や植栽等がされている土地について、土地改変時に安全を確保するための注意事項を示した安全マニュアル(土地改変指針)を土地所有者や建設事業者等に配布し、毒ガスが埋まっていることを環境省が周知した。他にも、毒ガスの埋まっている可能性が高い場所を環境省は発表している。化学兵器と思われる埋設物を発見した場合には、被害拡大を防ぐために専門家に相談することが必要である。 また、平成19年度版環境白書によると神奈川県の平塚市においては、一部地域の地下水及び土壌から有機ヒ素化合物が検出されたため、表層土壌調査などを実施した結果、有機ヒ素化合物の原体と考えられる白い塊及び汚染土壌が発見された。平塚市には、かつて旧日本海軍の化学戦研究機関が存在していた。ほかにもいくつかの発見事例があり、化学兵器禁止機関への報告などがされている。なお、茨城県神栖市において、有機ヒ素化合物による地下水汚染と健康被害が報告され旧日本軍の遺棄兵器ではないかと疑われたものの調査により旧軍由来ではないものと発表された。 旧日本軍が太平洋戦争末期に中国領内に化学兵器を遺棄したとも考えられており、旧日本軍の遺棄化学兵器を処分するため、多額の費用を捻出することが決定された。ただし、これ以外にも中ソ両軍が放棄していたものが相当数含まれるとの憶測もあり、議論を呼んでいるほか、日本敗戦時に中国軍に引き渡された兵器に対する処理義務はなかったとの主張も見られる。この処理に関しては日中間で1999年に『日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書』が取り交わされている(詳細は遺棄化学兵器問題を参照)。
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