化学兵器・ガス室
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 09:41 UTC 版)
シアン化水素は、ナチスによるホロコーストの際に、ガス室で使用された。この時にはツィクロンBと言う燻蒸式の殺虫剤が流用された。シアン化水素は可燃性であり、ガス室の隣に燃焼炉が設置されていたため、危険で使えないという懐疑論も出たものの、シアン化水素が爆発し得る濃度は5.6パーセント(56,000 ppm)以上であり、一方で、ヒトを中毒死させるためには270 ppm〜5000 ppm(0.5パーセント)で充分であるから、理論上可能である。 なお、アメリカ合衆国の一部の州では、ガス室を用いた死刑執行にシアン化水素を用いていたが、処刑後の清掃などに多額の費用が必要であるといった理由で、1999年以降行われていない。 また、日本軍が対戦車兵器として液化青酸270 g入りのビン「一式手投丸缶」(ちゃ剤、ちび弾とも呼ばれた)を製造した。戦車にぶつけて割ると、装甲の隙間から中に入り込み、乗員を中毒させるのが目的であった。日本で時々、遺棄されたこの兵器が地中から発見されてきた。 この毒性に着目したオウム真理教は、新宿駅青酸ガス事件として知られるテロ未遂事件を起こした。 しかしながら、シアン化水素は空気よりわずかに軽いため、特に、野外で化学兵器として使用しても、早期に上空へと浮き上がり、散逸してしまう。このため化学兵器としてのシアン化水素の用例は稀であり、むしろ、青酸化合物では、毒性が類似しており空気より重い塩化シアンの方が使われる。
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