勁の分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 02:15 UTC 版)
勁の種類には、各流派で様々なものがあり、その分類方法・定義も異なる。発勁は中国武術の核心ともいえる項目であり、その理解には最大の注意が必要である。 以下、よく使用される発勁名を挙げるが、他にも多くの発勁がある。また、流派によって同じ発勁方法の名前が異なる場合もある。 翻浪勁(ほんろうけい、或いは翻滾勁) 丹田の竪回転により生じた勁が脊椎を波浪の如く伝わるもの。 形意拳の『鷹捉』『劈拳』等、起鑽落翻の手法による把式などに用いられる。 螺旋勁(らせんけい、或いは擰弾勁) 丹田の横回転により生じた擰勁が四肢末端へ伝わるもの。 八卦掌の『白蛇吐信』などに用いられる。 纏絲勁(てんしけい) 陳式太極拳等で用いられる。 抽絲勁(ちゅうしけい) 楊式太極拳等で用いられる。 轆轤勁(ろくろけい) 劈掛拳等で用いられる。 沈墜勁(ちんついけい) 心意六合拳等で用いられる。 十字勁(じゅうじけい) 八極拳等で用いられる。 掤勁(ほうけい) 太極拳で常に働いているもの。整勁と関連が深い。四正の掤ではない。 整勁(せいけい、或いは動力定型) 内外六合等の要求を満たした把式に発生するもので、中国武術の基本である。 『整』には「整える」「整った」の他に「全身の」という意味がある。 内勁(ないけい) 外勁と対になる発勁の分類方法の一つ。 翻浪勁、螺旋勁、纏絲勁、抽絲勁他。 寸勁(すんけい) 距離による発勁の分類の一種であり、門派によっては発勁の技法の一つとされ、いずれにしても至近距離から相手に勁を作用させる技術である。身体動作を小さくし、わずかな動作で高い威力を出す技法全般を指す。日本国内で一般に発勁といった場合、この寸勁を意味していることが多い。距離による分類としては、他に分勁、零勁がある。 その方法論は各門派によって様々であるが、呼吸法や重心移動、地球の重力、身体内部の操作、意識のコントロール等を複合的に用いて、最小動作で最大の威力を出すことを目的とする。 近似のものに、八極拳の暗勁、蟷螂拳の分勁(この場合は密接した状態での発勁、または発勁動作が分かりにくい発勁)などもある。アメリカではブルース・リーが行ったものが有名で、ワンインチパンチと呼ばれた。これはブルース・リーが学んだ詠春拳、周家蟷螂拳の技術の応用である。名称の由来は1寸と1インチの長さが近いことから。 浸透勁(しんとうけい) 本来、中国武術には浸透勁という用語は存在しない。しかし、日本においては様々なメディアで用いられ一般化してきているので、ある程度の定義付けを行える。浸透勁とは、勁を作用させるときに幾つかの処理を行うことで効率良く作用させることができる勁、あるいはその方法である。 『浸透』という言葉から特殊なものを想像されがちだが、そもそも人体に勁を作用させると筋肉の収縮によりその威力が軽減される。例えば棒立ちの相手の腹部に発した場合、小さい勁であれば緊張させた筋肉の弾力で弾かれる、大きい勁であれば作用させた対象を移動させる結果になる。この「弾かれる」「移動させる」という状態を『浸透していない状態』とするならば、「弾かれないように密着 / 粘着している」「筋肉が弛緩した瞬間を作り、その時に作用させることで移動するエネルギーにならず、体内を変形させるエネルギーになっている」といったことが『浸透した』状態である。勿論これは一例である。 この『浸透した』状態を作るために、各門派には様々な理論 / 方法がある。これらは秘伝に属するものと考えられがちだが、実際には初期に「それと知らずに」教わるものである。というのも形意拳では最初に学ぶ拳の握り方がそうであるし、八卦掌ではよく用いる擦り付ける / 粘り付くような打撃法がそうだからだ。形意拳の拳の握り方については弾丸のホローポイントやソフトポイントの性質とほぼ同様と考えてよい[独自研究?]。
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