初期の生理学研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 17:59 UTC 版)
「アンセル・キース」の記事における「初期の生理学研究」の解説
スクリップス海洋研究所で特別研究評議員として働いていたキースは、統計回帰分析(Statistical Regression Analysis)を用いることで魚の体長から体重を推定していた。当時、生物統計学(Biostatistics)においてこの方法を採用したキースはそれの草分け的な存在であった。アウグスト・クローグのもとで学んでいたキースは魚の生理学について研究し、魚が鰓(えら)を通して塩化化合物の排泄作用を制御し、それによって体内のナトリウム(Sodium)の量を調節する証拠を示した灌流(「かんりゅう」, 血管を経由して器官や組織に液体を注入する)の技術を開発した。キースはこの灌流法を用いて、アドレナリン(Adrenaline)とヴァソプレッスィン(Vasopressin)が鰓液の流れと魚の体内における浸透圧の調節に及ぼす影響について研究した。また、キースは機能が向上したケルダール法(Kjeldahl Method)の装置も考案した。クローグによる以前の設計を改良し、生物学の標本内部の窒素の含有量の迅速な測定を可能にした。これはバッタ類の卵のタンパク質の含有量や、ヒトにおける貧血といったさまざまな活量を測定するのに役立つことが分かっている。ハーヴァード大学疲労研究所(The Harvard Fatigue Laboratory)にいたころ、キースはケンブリッジ大学の生理学者で自身の指導教官、ジョゼフ・バークロフト(Joseph Barcroft)が、テネリフェ島(Tenerife, スペイン領カナリア諸島にある島)にある最高峰・テイデ山(Pico del Teide)に登頂したこと、その後の彼の報告に感化された。キースはアンデス山脈への遠征についての草案をまとめ、この研究は高地で働いているチリ人の鉱山労働者に有意義であるかもしれない、と奨めた。その許可を与えられたキースは1935年に一団を結成し、高血圧の人体への影響、高地が人体に与える影響について研究した。キースは9500フィート(約2900メートル)の高地で2~3ヶ月過ごし、その後、15000~20000フィート(4572~6096メートル)の高度で5週間過ごした。キースは「ヒトは中高度には適応できたとしても、高度にどれだけうまく適応するか、を予測できる方法は見出せなかった」と記録している。これは圧力制御が実用化される前の時代の操縦士候補生にとっては障害となる可能性がある。キースはこれらの研究を通して、概要で「環境変化に対する人間の生理学的適応は事前予測が可能な現象だ」と述べた。血圧や安静時の心拍数といった要因が「人間一人一人に見られる永劫不変の特質である」と考えられていた時代において、これは斬新な考え方であった。
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