光導波路とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 電気 > 電気化学 > 導波路 > 光導波路の意味・解説 

ひかり‐どうはろ〔‐ダウハロ〕【光導波路】

読み方:ひかりどうはろ

光の信号をある限定され経路に通すための素子光デバイス一種光の屈折率の違いなどを利用し、本来、直進性の高い光を経路沿って導く。電子回路における配線相当する光ファイバー同様の役割をもつが、主に平面状・板状構造をもつものを指す。


光導波路

読み方ひかりどうはろ

光導波路とは、光の屈折率の違い利用して基板上に光の道設け光信号を導くように加工され回路のことである。電気回路中を電子流れるように、光を回路中に流すという点では、光導波路はいわば光の配線板であるといえる

光導波路は、光屈折率利用して直進性の高い光を導くという点では光ファイバーと同様であるといえるが、光ファイバーのような3次元繊維構造ではなく一般に平面構造となっている。


光導波路

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/30 04:02 UTC 版)

光導波路(ひかりどうはろ、こうどうはろ、Optical Waveguide)とは、光学的な特性をもつ物質を用いて作成された、通信に光を用いる伝送路のこと。

既存の光ファイバーを包摂する概念であるが、「光導波路」という語句は主にシート状または板状の構造をもつものを指す傾向にある。また、単に光を伝送するだけではなく、通信に必要な電気素子や、光路の分岐・結合構造が組み込まれたものもある。

従来の金属性通信ケーブルと比較して超高速伝送[1]が可能であること、一般に電波障害(EMI)に対する耐性が高いことからFTTHなどの超高速通信・次世代の情報処理基盤として期待されており、光ファイバーの接合などに用いられている。また、分光分析への応用も実用化段階に達している。現在(2008年)段階では今なお発展中の技術である。

概要

スラブ型光導波路の構造

光導波路において、光路は一般に光ファイバーと同様の構造をもつ。すなわち、光路となるコアと、コアを取り囲むクラッドである。コアとクラッドは屈折率が異なり、境界面で全反射を起こして光はほぼロスなく進行する。

構造

コア構造の配置によって次のように大別される。[2]

  • スラブ型:平板状のコアを平板クラッドで挟み込んだもの
  • 埋め込み型:芯状のコアをクラッドで取り囲んだもの
  • 半埋め込み型:芯状のコアをクラッドで取り囲んだもので、コアの一面が外部に露出しているもの
  • リッジ型:板状コアにレール上クラッドを載せて配置したもの(これをメサ型・装荷型とよぶこともある)
  • リッジ型:単一素材を断面が凸字型になるように整形して製造したもの

また、フォトニック結晶を利用した光導波路も研究が進められている。大まかな原理として、フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップによる光の封止を導波路の形成に利用している。

素材

構造素材として、無機系素材では石英ガラスシリコン、有機系素材では高純度ポリイミド系樹脂・ポリアミド系樹脂・ポリエーテル系樹脂などが使用され、赤外線を用いる場合には透過特性の改質のために重水素化やフッ素[3][4]を行ったものが利用されることがある。選定にあたっては、光の透過性・屈折率・波長特性・分散性の低さなどが重視される。

導波モード

光ファイバーにおけるシングルモードマルチモードと同様に、光導波路においても導波モード別に構造が異なる。シングルモード光導波路(単一モード光導波路)においてはS偏光もしくはP偏光を伝送に用いる。この場合、コア-クラッド境界での全反射に伴う位相シフトによる干渉が問題となる。シングルモード光導波路の形成にはスラブ型・もしくは埋め込み型の構造が必要であり、光導波路への光線入射角・コア厚の制約がかなり大きい。シングルモード光導波路は伝送損失が低いが、構造が繊細であるため物理的に弱く高価となる。

リッジ型・半埋め込み型の光導波路を用いた場合、マルチモード光導波路となる。このとき伝送光の偏波状態は維持されず伝播する。

製造

コア・クラッド構造を構成する方法として、まず半導体工学に類似のフォトリソグラフィー法があげられる。これは、シリコンで行う場合には次のような方法がある[5][6]

  • 酸素を高濃度でドープしたシリコンを用意し、フォトレジストを塗布
  • 光導波路パターンをステッパーなどで露光
  • 現像し、エッチングによって光導波路パターンをシリコン上に形成
  • 高温・高圧処理によってフォトレジストで被覆されていない部分のシリコンを酸化させる。光導波路パターン直下のシリコンは酸化されないか、酸化の度合いが低く留まる
  • 酸化によって屈折率差が形成される
  • 高屈折樹脂などで被覆する
  • 光導波路ができる。

フォトリソグラフィー法は量産性に問題があるとされ、加工コストの問題も指摘されている。そのためより安く製作する方法が模索され、超微細金型で光学樹脂を成型する手法や紫外線硬化樹脂を利用する方法[7][8]などが開発された。

回路の構成

伝送に用いる光は、赤外線・可視光線などが用いられる。光の発生はレーザーダイオードによるレーザー・微細プリズムや端面へのレンズによる集光などによる外部からの導入などを利用し、受光はフォトダイオードなどを用いる。[9]

光導波路間の光接続には、接続したい導波路を平行に接近させ、エバネッセント場による全反射面からの光の染みだしを利用する方法、接続導波路間に回折格子を形成する手法などがある[10]。光のスイッチングは、導波路を温度制御して屈折率を変えて行う方法や、微小なミラーを用いる方法、光学オイルを発泡させて行う方法などが指摘されている[11]

電子回路と光導波路を接続する場合(電子-光接続)には、光検出器発光ダイオード等の発光素子を用いる手法が一般的である。

光を増幅させる方法としては、増幅させたい部分に適切な物質をおき、反転分布を形成させることでレーザーダイオード類似の方法によってアンプとすることが可能となる。

さらに光導波路を用いて光論理回路・光集積回路を構成し、光演算素子を製造する研究も行われている。現在の高周波電流を用いた演算素子は高速化が行き詰まりをみせており、マルチコア化や計算機科学を駆使した手法によって改善が図られているが、物理的な障壁は越えがたい。光は高周波電流と比較して桁違いに波長が短く、高クロック化に適している。 しかし、μm・nmレベルの構造で光学素子を形成する技術は未成熟である。また、設計の困難さも指摘されている(遺伝的アルゴリズムによる解法が検討されている)。LSIの製造プロセスと同様に、光集積回路全体を一度に作りこんだものをモノリシック集積回路・複数のモジュール(プロセス)ごとに分けて製造し、集積して実装したものをハイブリッド集積回路とよぶ。

脚注

  1. ^ 日経BP Tech-On フィルム状光導波路 1Gbpsとの指摘
  2. ^ 卒業研究報告 Si光導波路の作製 指導教員 神戸宏教授 報告者 難波康典 平成17年2月22日 高知工科大学 電子・光システム工学科(エッチングによって単一素材リッジ型光導波路を製造した例)
  3. ^ 含フッ素ポリイミドの光学物性と応用 東京工業大学・有機高分子物質専攻 安藤慎治
  4. ^ EnplaNet.com 光導波路の研究開発とポリマー材料
  5. ^ 金沢大学大学院自然科学研究科 電子情報科学専攻 超高周波工学研究室 Si光導波路
  6. ^ 光-光スイッチング方法、光-光スイッチング素子およびその製造方法
  7. ^ 関西ペイント株式会社 フィルム積層型導波路形成システムの開発について
  8. ^ 豊田中央研究所 研究報告 フィルム積層型導波路形成システム
  9. ^ システムインスルメンツ株式会社 光導波路分光法を用いた電気化学測定のイメージング 高橋浩三
  10. ^ 特許庁 光通信回路部品 光導波路の配置(各分野における特許出願件数の報告)
  11. ^ 科学技術動向 特集:光通信技術の研究開発動向 2001年8月号 文部科学省科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター

参考文献

  • 光エレクトロニクス入門(改訂版) 西原浩・裏升吾 コロナ社 2005年3月 ISBN 978-4339011500

関連項目

関連文献


光導波路

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/17 07:06 UTC 版)

量子カスケードレーザー」の記事における「光導波路」の解説

有用な発光デバイス作製するために量子カスケード利得材料処理する最初のステップは、利得媒質を光導波路に閉じ込めることである。これにより放出された光をコリメートされたビームに向けることが可能になり、光が利得媒質戻り結合するというレーザー共振器構築される2種類の導光路一般的に使われている。リッジ光路量子カスケード利得媒質中に平行な溝をエッチングして、通常は~10umの幅、数mm長さ量子カスケード材料絶縁された溝が形成される通常注入電流リッジ導通するために溝内に誘電材料が堆積されリッジ全体が金で被覆されることによって導電性付与しリッジ発光時の放熱助ける。光は導波路へき開された端面から放射され通常寸法がほんの数マイクロメートル活性領域有する2番目は埋め込み型ヘテロ構造である。ここでは、QC材料同様にエッチングされて、絶縁されリッジ形成される。 しかし現在では、新し半導体材料リッジの上形成されるQC材料成長した材料の間の屈折率の変化は、導光路形成するのに十分で注入され電流QC利得媒質に導くために、誘電体材料QCリッジ周囲成長した材料の上堆積される埋め込み型ヘテロ構造導波路は、光が生成されている時にQC活性領域から効率的に放熱する。

※この「光導波路」の解説は、「量子カスケードレーザー」の解説の一部です。
「光導波路」を含む「量子カスケードレーザー」の記事については、「量子カスケードレーザー」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「光導波路」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



光導波路と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「光導波路」の関連用語

光導波路のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



光導波路のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
IT用語辞典バイナリIT用語辞典バイナリ
Copyright © 2005-2025 Weblio 辞書 IT用語辞典バイナリさくいん。 この記事は、IT用語辞典バイナリの【光導波路】の記事を利用しております。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの光導波路 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの量子カスケードレーザー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS