借用の起こる状況など
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 15:35 UTC 版)
政治的・文化的に影響力の大きい言語圏の言語の語彙を、周辺の言語が取り込んで使う場合が多い。 これは一つには影響力の大きい言語圏で新しい意味を表す言葉が作られるため、その意味を表すためには借用してしまうのが手っ取り早いという便宜上の理由がある。日本語が古代から近世にかけて中国語から、近現代に英語を筆頭としてヨーロッパ諸言語から、それぞれ数多くの借用をしているのがその例である。 またもう一つ、属国や植民地などで支配側の言葉が使用されているうちに、その語彙を被支配側の言語が取り込んでしまう場合もある。かつて日本の統治下におかれたパラオなどで日本語の一部がそのまま現地語になっているのがその例である。 逆に交易や侵略が余り無かった言語は、新しい意味を表す言葉も日常生活の基本語彙を組み合わせて作る事が多い。例としてはドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語などが挙げられ、基本語彙も少ない(さすがに今ではインターネット用語などは英語をそのまま使う事も多い)。 単語だけでなく、文字や宗教も借用(外来)される事が多い(ラテン語→ラテン文字とキリスト教、ペルシャ語→アラビア文字とイスラム教、中国語→漢字と仏教など) 関係が密接だった場合は、語彙の約半数が借用語となる事も珍しくない。 綴り・文字・発音においても、借用語のみにしか使われない特別なものが出来る事がある。英語の"j",語頭の"v"(以上フランス語起源),[k]と発音される"ch"(古典ギリシャ語、イタリア語)や、日本語の「ティ」「ヴ」が例として挙げられる。 その言語の文化圏に政治的影響力が無い場合でも、独特の文化体系がある場合、その用語だけが周辺言語に借用される場合がある。日本のアニメ・漫画文化などがそれに当たる。 特産物、地域独特の事物に関する単語、または地名は政治的・文化的影響力の大小にかかわらず取り入れられることがある。(例えば日本語における、ベトナム語のアオザイ、タイ語のパクチー、アイヌ語起源の北海道の地名など) 英語は歴史的にフランス語を大量に借用しており、近代以降にラテン語や古典ギリシャ語から造られた高級語彙も翻訳借用によらず直接導入することが多かった。その上に近代のイギリスには世界中の植民地から様々な語彙が流入し、現代でも国際語としての影響力ゆえに新しい文物は英語で世界に紹介される。こうして英語は、世界一語彙が多く、また借用語の比重がかなり高い言語となった。逆に、よく知られているように英語は世界一の借用語提供言語でもある。
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