併給調整・他法との調整
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 15:11 UTC 版)
「傷病手当金」の記事における「併給調整・他法との調整」の解説
同一の疾病、負傷について労災保険または公務災害から傷病手当金に相当する給付を受けることができる場合、傷病手当金はその全額が支給されない(第55条1項)。 休業期間中に傷病手当金の金額以上の報酬(控除前の総支給額。昭和24年12月26日保文発2478号)を得た場合は支給されず、傷病手当金の金額未満の報酬を得た場合は差額支給となる(第108条1項)。なお被保険者期間中に老齢年金を受給しても調整は行われない。これは欠勤した日に報酬の全部又は一部が支給される場合の調整規定であり、出勤すればそもそも「労務不能」とならないので支給されない。 何等の成文もなく、ただ慣例として事業主の意思により私傷病の場合においても金銭を給付し、名目を休業手当、休業扶助料、見舞金等と称しているものは単に病気見舞であり報酬と認められず第108条の適用はない(昭和10年4月20日保規123号)。見舞金その他名称の如何を問わず、就業規則又は労働協約等に基き、報酬支払の目的を以って支給されたと看做されるものであってその支払事由の発生以後引き続き支給されるものは第108条の「報酬」に該当する。(昭和25年2月22日保文発第367号)。当該支給期間以前に支給された通勤定期券の購入費であっても、支給期間に係るものは調整の対象となる。 同一の傷病により障害厚生年金(障害基礎年金との合算)を受ける場合、原則として傷病手当金は支給されず、障害厚生年金の額の360分の1の額が傷病手当金の金額より少ない場合は差額支給が行われる(第108条3項)。障害手当金を受ける場合には、障害手当金の支給を受けることになった日からその者がその日以後に傷病手当金の支給を受けるとした場合の合計額が障害手当金の額に達するに至る日までの間傷病手当金は支給されず、合計額が障害手当金の額を超える場合で政令で定める場合は差額支給が行われる(第108条4項)。同一の傷病により障害基礎年金のみ支給される場合は、傷病手当金は同時に支給される。また同一の傷病によらない障害厚生年金と傷病手当金は、同時に受給できる。 第108条1~4項に該当する者が、疾病にかかり、負傷した場合において、その受けることができるはずであった報酬の全部又は一部につき、その全額を受けることができなかったときは傷病手当金の全額、その一部を受けることができなかった場合においてその受けた額が傷病手当金の額より少ないときはその額と傷病手当金又は出産手当金との差額を支給する(第109条1項)。なお、第109条1項の規定に基づき保険者が支給した保険給付は、立替払い的性質のものであるので、保険者は事業主から支給した額を徴収する(第109条2項)。 継続給付の受給時に老齢厚生年金や老齢基礎年金もしくは退職共済年金を受給することができる場合には、原則として傷病手当金は支給されず、老齢年金等の額の360分の1の額が傷病手当金の金額より少ない場合は差額支給が行われる(第108条5項)。この場合、老齢年金は全額支給される。 労災保険から休業補償給付を受けている健康保険の被保険者が、業務外の事由による傷病により労務不能となった場合、休業補償給付の額が傷病手当金の額に達しないときにおけるその差額部分に係るものを除き、傷病手当金は支給されない(昭和33年7月8日保険発95号)。つまり、いわゆる業務上外の併給は行わない。 出産手当金と傷病手当金を同時に受けることができる場合、出産手当金が優先して支給され、傷病手当金はその期間支給されず、出産手当金の額が傷病手当金の額より少ないときは、傷病手当金はその差額が支給される(第103条1項)。もし出産手当金を支給すべき場合において傷病手当金が支払われたとき(差額分を除く)は、その支払われた傷病手当金は、出産手当金の内払いとみなされる(第103条2項)。傷病手当金の支給を受ける中途において出産手当金の支給を受けたため、傷病手当金の支給を受けることができなかった場合でも、傷病手当金の支給は、その支給開始の日から1年6か月で打ち切られる(昭和4年6月21日保理1818号)。 継続給付の傷病手当金を受給している場合、雇用保険の傷病手当は支給されない。雇用保険の基本手当を受給した場合、「労働の意思及び能力があった」という認定が公共職業安定所でなされたのであって、労務不能を支給要件とする傷病手当金の支給は受けられない。一時的労務不能(15日未満)と公共職業安定所が認定して基本手当を支給したのであれば、離職前から現在まで療養のため労務不能でかつ療養の給付をひきつづき受けている旨証明して、基本手当を返納し、改めて傷病手当金の支給を申請しなければならない(昭和29年3月4日保文発2864号)。 傷病手当金の支給要件に該当する者が介護休業期間中である場合、傷病手当金は支給される(平成11年3月31日保険発46号、庁保険発9号)。ただし休業期間中に介護休業手当等の名目で報酬と認められるものが支給された場合は、傷病手当金の支給額について調整が行われる。 保険者は、偽りその他の不正行為により保険給付を受け、又は受けようとしたものに対して、6か月以内の期間を定め、その者に支給すべき傷病手当金の全部または一部を支給しない旨の決定をすることができる。ただし、偽りその他不正行為があった日から1年を経過したときは、当該給付制限は行えない(第120条)。
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