住居がないのに車に住む理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 04:47 UTC 版)
「車上生活者」の記事における「住居がないのに車に住む理由」の解説
かつて屋根の下で暮らしていた時に車を所有していた者が、住むところを失った時に一時的に雨風をしのぐ手段として手っ取り早く車上生活に移行するケースが多いと考えられる。その理由として考えられるものを以下に挙げる。 賃貸住宅は家賃の滞納を主とする契約不履行を事由に退去させられるが、自動車についてはローンを抱えてさえいなければ、少なくとも次の車検日および諸経費(自動車税・自賠責の保険料など)の納付日まで通常の使用が可能である(諸経費を納付できない場合、売却する以外にない)。 主に停めて使用するため、冬季の暖房を除いて燃料代がかからず、路上駐車であれば駐車料金も必要ない。住宅(持ち家や賃貸住宅)や簡易宿泊施設と違って光熱費の負担もほとんど無い。そのため、生活費が比較的安く済む(※食費は逆に相当かさむが、総合的には安くなる)。 仮に故障や燃料切れなどによって自走不可能になっていたとしても、雨露を凌げる場所ではあり、路上生活に比べれば環境が良い。 もっとも、理由はそればかりではなく、個々にさまざまな事情のあることが分かっている。例えばNHK総合『クローズアップ現代+』の2019年(令和元年)11月19日放送回「車上生活 社会の片隅で…」では、妻に先立たれた7年前に普通乗用車で車上生活を始めたという元トラック運転手の高齢男性が紹介され、夫婦の思い出が詰まっている愛車を手放すことができず、さりとて住宅と愛車と生活を全て維持してゆく経済力は無いので、住宅を諦めざるを得なかったと答えた。仕方なく車中泊を続けるうちに車上生活者になってしまったといい、生活保護を受けようとも思ったが、自動車を所有していることで受給条件を満たせないため、門前払いを食らったと苦笑いした。ほかにも、認知症を患って徘徊を繰り返すようになった妻がご近所に迷惑をかけてしまうのではないかと心配するあまり、アパートを引き払って車上生活を始めたという70代の老夫婦もいた。児童虐待を受けてきた20代の男性は、対人関係が苦手で友人も恋人もおらず、人を避けたいがために車上生活を始めたといい、取り敢えず不満は無いとしながら、このままでいいとは思っていないとも答えた。 しかし何と言っても、日本の場合は、治安が安定していること、道の駅という非常に便利でありながら費用をかけずに利用できる(トイレや駐車場を24時間開放しているうえ、有料ながら食事もできる、中には有料ながら入浴もできるところもある)施設が全国各地に数多く生まれたこと、更には携帯電話(車上生活でも他人と随時連絡がとれる)、トランクルームおよびコインランドリーの普及が進んだことにより、車上生活がやりやすくなったことが大きいと考えられる。 一方で車上生活者は法規上は住所不定になるため、郵便物や宅配の荷物および行政サービスが受けられない問題もあるほか、進学や就職において不利な扱いを受けることもある。
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