他の音源との違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:55 UTC 版)
PD音源のように正弦波の位相を操作して音色を作る音響合成方式としては、先行して実用化されていたFM音源があるが、PD音源の設計はむしろアナログシンセサイザー(減算合成方式)に近い。対して、PD音源の発展型であるiPD音源はFM音源に近い設計となった。 FM音源 FM音源は正弦波同士を位相変調させて音色を作る合成方式である。正弦波オシレータと音量制御機能とを備える「オペレータ」ユニットを、アルゴリズムと呼ばれる様々な接続パターンでつなぎ、その接続関係に基づいて、直列での位相変調や、フィードバックでの位相変調(倍音強調効果)、並列でのミックスができる。 PD音源 PD音源は正弦波オシレータの位相を非線形特性で歪ませて音色を作る合成方式である。DCO・DCW・DCAで構成される発音系統は、VCO・VCF・VCAを用いたアナログシンセサイザーの構成に倣っており、DCWの挙動はVCFに似るが、実際にはDCWは倍音を増やす量を制御し、VCFは倍音を減らす量を制御している。2つの発音系統(ライン)の間では、ミックス・リング変調・ノイズ変調ができるが、FM音源やiPD音源のような位相変調はできない。 理論上PD合成は、その歪んだ位相と線形位相との差を変調信号として位相変調をおこなうのと同等の結果が得られるが、一般的なFM音源は正弦波以外のそうした変調信号を直接生成できない。PD音源特許に対してFM音源との類似性が主張された際にもこれは争点となった。 正弦波によるFM合成音の倍音分布はベッセル関数に従い、変調の深さによっても周波数スペクトル包絡形状が多様に変化するが、PD合成音はより滑らかなスペクトル包絡とその変化をもつ。 iPD音源 iPD音源ではモジュール間での位相入力機能が加わった。同時にDCWなどは省かれたため、iPD音源とPD音源との間に後方互換性はない。 DCO・DCAで構成される8つの発音系統(モジュール)を備え、これらはペアで4組の「ライン」にまとめられている。ラインの2つのモジュールの間ではミックス・リング変調・位相制御ができ、またラインの出力で次のラインのモジュールを位相制御できる。この仕組みによりモジュールは648通りの接続パターンをもつ。 iPD音源の位相入力はFM音源の位相変調と混同されることもあるが、FM音源でいうキャリア位相成分のない純粋な位相入力であり、技術的にはウェーブシェイパーに類する。そのため、FM音源より変化の規則性が高く、結果が比較的予測しやすい。またiPD音源では正弦波以外のオシレータ波形やリング変調を交えた音作りができる。
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